
日本は先進国の中でも痩せている女性の割合がもっとも高い国といわれています。今のかわいさや、理想の体型を目指したい気持ちは大事。だけど、そこに自分らしさはありますか?そして、過度な痩せ体型には、健康懸念が潜んでいることは知っていますか?
そこで、低体重・低栄養による健康懸念をいち早く提唱した糖尿病の権威である順天堂大学教授 田村 好史先生と、今を楽しんでいる大学生ミサキさん、モエさん、アオイさんが体型や健康との向き合い方について話し合っていきます。
体型や健康への向き合い方は、若い世代だけの問題ではありません。ともに考えるきっかけとして、親御さんにも読んでいただける内容になっています。

3人は、生活リズムも習慣もそれぞれ。まずは、簡単に比較できるように表にまとめてみました。(表1)

(表1)
ミサキさん
全体的に食べる量を減らすというよりは、夜だけ調整しています。普段は飲食店でのバイト先の賄いをいただきますが、調整するときは食べずにヨーグルトにするなどにしています。
アオイさん
私は食べないダイエットをしてしまったことがあって、肌も荒れるし、メンタルも落ちるし、その期間は調子が悪かったです。その経験があるので、今は食事ではなく運動で調整しています。
モエさん
私は痩せたいと思ったことがあまりなくて……食べたいときに食べたいものを食べている感じです。生活習慣も含めると、私はかなり乱れていると思います。
田村先生
現状の生活リズムは、忙しい学生生活ではよくあるパターンですが、この状態が続くと体調を崩しやすくなる場合があります。健康を考えるうえでは、食事・運動・睡眠の主にこの3つの項目を重要視しています。この3つのバランスが整っていれば、おおむね問題ないと考えます。
この3つのバランスが崩れると疲れやすい、頭痛、冷え、メンタルの落ち込み、肌や髪に不調が出る、生理のときに調子が悪くなるなど、さまざまな症状につながりやすくなる。大学生のうちはなんとかなっていることもあると思いますが、社会人になって忙しくなると、今以上に体調を崩しやすくなる可能性があるかもしれません。
健康の視点では、食事・運動・睡眠のサイクルをしっかりと整えることが一番大事です。私自身も、普段から「ちゃんと3食食べる」「1日8000歩歩く」「1日7時間寝る」ということの重要性は伝えています。だいたい1週間続けていくと、よくなっている実感を得る方は多いと感じています。

アオイさん
頭痛や冷えなどの不調はすべて当てはまります……。食べないダイエットをしていた頃は、何もしてないのに涙が出る日もありました。そのときに比べたら今はまだいいほうですが、不調が消えたかというと決してそうではないです。
田村先生
原因はわからないけど、なんとなく調子が悪い状態を医学的には不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼びます。頭痛、冷え、疲れが取れない、眠りが浅い、といった不調の原因はひとつではなく、生活習慣の積み重ねで起こることもあると考えた方が良さそうです。
田村先生
なんとなく体調が悪いと感じていても「しょうがない」「みんなも調子悪いからまぁいいか」と、病院には行かず、ドラッグストアで、「これを飲んでおけば大丈夫」とやり過ごすことがあると思います。この状態が続いてしまうと、さまざまな健康上の懸念が考えられます。
近年で特に懸念されているのが、栄養不足やそれによる痩せです。私は『日本肥満学会』というところで活動しているのですが、2025年4月に【女性の低体重/低栄養症候群(FUS)】という疾患概念をワーキンググループの一員として作りました。危険なのは、本人がダイエットや生活習慣が原因と気づけないことです。ダイエットをしているから調子が悪くなっていることに気が付いていない人はかなり多いのではないかと考えられます。

アオイさん
私もそこまでいったから気が付いたけど、その手前ではわかりませんでした。
田村先生
多くの人には理想体重があり、少し増えると無意識に体重調整(ダイエット)を始めてしまうのではないでしょうか。中には、常にダイエット意識を持ち続けていて、1年365日のうち 300日以上は体型を気にして過ごしているケースもあるかもしれません。
また、体調を崩しやすい人にはもうひとつの特徴があります。それは、ストレスが強くなると過食に傾き、その反動でダイエットを繰り返してしまうパターンです。この状態は必要な栄養を削ってしまっている状態になるため、体調や気力が低下していき、動けなくなることでメンタルまで落ちてしまうという負の連鎖につながるのでは、と考えています。
アオイさん
ミスコンに出ていたとき、他の出場者の中には、モデルや女優をしている人もいて、私は自分だけ丸いと思い込んでいました。標準体重だったのに、とにかく痩せなきゃと焦っていたこともあって、手っ取り早く痩せたくて食べないことを選びました。今思えば過食嘔吐もあったのかなと思いますし、メンタルも限界でした。
田村先生
食べたいのに我慢するのは動物の中でも人間くらいのもので、本能に反するため心身には大きなストレスがかかります。でも、ダイエットが当たり前になると、そのストレスに気が付きにくいですよね。
食べない状態が続くと代謝が落ち、体は生命を維持しようとするために、生理が止まるなどエネルギーを極端に節約し始めます。これはとても危険な状態です。
モエさん
スぺ120で計算してみたことがあるのですが、私の場合37kg とかになって、さすがにそれはないと思いました。
アオイさん
私も、美しい痩せ方だとは思えなくて。
田村先生
その感覚はとても大事です。医学的には、【身長160cmで47kg以下】程度が痩せている指標です。この指標に該当する人に「ダイエットしたことがありますか?」と聞くと、約6割は「したことがある」と答えます。その中にはダイエットをして無理やりその体重にしている人もいると考えられ、それはよくないだろうと捉えています。
もともとの体質的に痩せに分類される人もいますが、そういった方から「太った方がいいのですか?」と質問されることがあります。
モエさん
私も平均体重よりも軽いですよと言われたことがあって、「体重を増やさなきゃいけないの?」みたいな。
田村先生
そう思ってしまいますよね。ですが、もともと痩せ体質の人の体重を増やしたら、もっと健康になるかどうかはあまりよくわかっていません。そのうえで現時点の私の考えをお話しすると、しっかり3回食べて、運動もそこそこしていて、「調子がいい!」と感じる体重を目指すのがいいように思います。

アオイさん
はい。将来の妊娠のしやすさとか、閉経に向けての更年期のお話とかは、痩せすぎていることで影響してくるみたいな。
モエさん
ちょっとずれるかもしれないんですけど、私は生まれつき骨が小さくて、ウエストは 50cmくらいしかないです。SNSでは細いウエストは骨が弱いのでは……という投稿を見ることがあって、将来、骨粗しょう症になっちゃうんじゃないかと気にしたことがありました。
ミサキさん
私もSNSで、痩せている人の投稿に対して「骨粗しょう症になるよ」「将来骨密度が……」みたいなコメントを読んだことがあります。そのときから「骨に影響あるんだ」と、なんとなく思ってるんですけど、あまり自分には関係ないのかなとか思っちゃった。
田村先生
今のこともとっても大事ですよね。ただ、知って過ごすことと、知らずに過ごすことでは大きく違うと思います。そのような状態が長引くと、将来的にはホルモンバランスの乱れや、骨密度低下、生理トラブルなどにもつながる可能性があります。若い頃に無理をすると、30代・40代で健康を大きく損なうケースも少なくありません。

対談を進める中で、3人は「自分の体が求めている心地よさ」について考え始めていました。無理なダイエットや SNSの価値観に合わせるのではなく、「調子がいい」という感覚を持って、自分らしさのペースを大切にすることが重要です。
Part2 では、3人と田村先生が「未来の自分」を見据えながら、低栄養による痩せすぎの健康懸念やこれからの選択について、さらに深く語り合っていきます。
田村 好史先生

順天堂大学大学院医学研究科スポーツ医学・スポートロジー / 代謝内分泌内科学 教授
順天堂大学国際教養学部 グローバルヘルスサービス領域 教授(併任)
1997年順天堂大学医学部卒業。カナダ・トロント大生理学教室で糖脂質代謝の研究に従事。2005年順大大学院博士課程修了後、2007年より同大医学部内科学代謝内分泌学講座准教授。2016~2018年にスポーツ庁参与を務めた。2017年より順天堂大学国際教養学部 グローバルヘルスサービス領域教授(併任)に。2021年からはスポートロジーセンター・センター長補佐(併任)。2024年から同大学大学院医学研究科スポーツ医学・スポートロジー教授、代謝内分泌内科学教授を併任。糖尿病の臨床のほか、インスリン抵抗性や異所性脂肪、やせ女性の代謝・健康問題、運動療法などに取り組む。「医学的に適正な体型を自分の意志で選択できる社会」を目指す、「マイウェルボディ協議会」の代表幹事も務める。2009年度日本体質医学会研究奨励賞、2018年度日本内分泌学会研究奨励賞を受賞。