
Part1では、大学生3人が語ったリアルな生活習慣や“なんとなく不調”の背景から、”調子がいいという感覚”が自分の体を知るうえで大切だという気づきが生まれました。
Part2では、さらに未来へ視点を広げ、今の体型意識や行動が、何年か先の自分の健康にどんな影響を与えるのかを、順天堂大学教授の田村先生と一緒に深掘りしていきます。

田村先生
若い世代は、今日が良ければいいという感覚を持っていることもあると思います。もちろん、それは自然なことですが、知識があるかどうかで未来は大きく変わることもあります。
たとえば、骨の健康は静かに失われていき、気づいたときにはかなり進行しています。睡眠不足、食べない生活、運動不足が積み重なっていくと、10年後、20年後のカラダに影響が出るリスクが高くなります。まだ大丈夫と安心せず、今から意識することも大切です。
アオイさん
私は不調を感じる日がありますが、まあ大丈夫だろうと流しているところがあります。でも先生の話を聞いて、将来につながっているというのは確かにそうですよね。
田村先生
不調に気づけている時点で、とても良いことです。違和感はカラダからのメッセージでもあります。
田村先生
私が心配しているのは、栄養不足による痩せの健康懸念がほとんど知られていないこと。特に、痩せていると糖尿病や妊娠中に血糖値が高くなる妊娠糖尿病になりやすいことが明らかになっていますが、ほとんど知られていません。現代の痩せている女性で多いパターンとして、食事量が少ない・運動をしていない・筋肉量が少ない、といういかにも“不健康な痩せ”が多く見られ、それが糖尿病になりやすくなる原因ではないかと考えています。

アオイさん
太っているほうが糖尿病になりやすいと思っていました。
田村先生
太っている人でも糖尿病になりやすいのですが、意外なことに痩せている人も、同程度かそれ以上に糖尿病になりやすいのです。
筋肉は日々、糖を取り込んでエネルギーとして使ったり、蓄えたりしています。
無理なダイエットや栄養不足で筋肉量が減ってしまうと、この「糖を受け止める場所」が減るため、処理しきれない糖が血液中に残りやすくなり、結果として血糖値が上がりやすくなると考えられています。
さらに、問題なのは若い時期の極端なダイエットです。臓器が成長する大事な時期に栄養が足りていないと、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを作る膵臓が十分発達しない可能性があります。その結果、大人になってから一般的な量を食べるようになると、血糖値が上がりやすい体質になっていることもわかってきています。
モエさん
将来のためにも、今から無茶をしないほうがいいってことですね……。
田村先生
まさに妊娠期にも影響してきます。体重増加を過度に恐れて食事を控えすぎると、赤ちゃんが低出生体重児として生まれることがあります。そして、その影響によって赤ちゃんが将来、糖尿病やメタボになりやすいことも研究でわかっています。
ミサキさん
将来の子どもに影響する可能性があることは想像していませんでした。
田村先生
みなさんもご存じだと思いますが、GLP-1製剤といった糖尿病の治療薬(マンジャロやリベルサス)を医療目的ではなくダイエット目的で安易に使うことが話題になっています。そのため、本来必要のない人が使用して体調を崩す例が増えています。
もっとも危険なのは、まったく痩せる必要がないのにそのような薬などを使ってしまうことです。調子が悪くなり、生理が止まってしまう場合もあり、見過ごせないところまできてしまっています。日本医師会や日本糖尿病学会からも注意喚起がなされています。
田村先生
その通りで、「痩せているほうが魅力的」という価値観は、無意識のうちに家庭やSNSから刷り込まれていきます。特に、「痩せた?」というなにげない一言が褒め言葉として扱われていることも、体重がまるで評価の基準になっている印象を与えるばかりか、低い方がいいという価値観を知らないうちに強制していることに、つながりかねません。
しかし、体型は多様であるはずです。誰かが作った理想像に自分を合わせたり、全員が同じ基準を目指したりする必要はありません。自分をその基準に押し込めようとすることで、心が疲れ、本当に必要なカラダの声が聞こえなくなってしまうのではないでしょうか。
ミサキさん
SNSを見ていると極端に細い人の投稿が流れてくることもあるので、無意識に比べてしまっていることはあるかもしれないです。
モエさん
人によっては、落ち込むこともあると思います。長い時間SNSを見ていると、だんだん客観的に見られなくなっちゃう気もしています。
田村先生
そこで大切にしてほしいのが、”ここちよさ”という、自分の中にしかない指標です。体重という数字は便利なように見えますが、プレッシャーになる場合もあります。
こうした感覚的なことは、数字よりもあなたのカラダのリアルな状態を教えてくれていると思います。
アオイさん
ダイエットをしているときは、頑張っているのに体重が減らなくて、いつの間にか追い詰められていました。
田村先生
そのように、体重などの数字に気持ちが引っ張られてしまう状態は危険です。本来、健康はもっと全体的で複雑なものです。食事、睡眠、運動、心の状態のバランスが整ってこそ、自分にとっての“ちょうどいいカラダ”が作られていきます。
自分自身がラクで、“この状態がちょうどいい=ウェルビーイング”と感じられることが、最も大切な基準なのではないかと考えています。
ミサキさん
“ここちよさ”って、カラダがちゃんとサインを出してくれてるんだって思えると、少し安心します。
モエさん
なんか、「私のここちよさは私だけのもの」って思えると、比べる必要がなくなる気がします。
ミサキさん
今日お話を伺うまでにもいろいろ試してきた中で、自分に合う食生活やダイエット法、「調子がいい」と感じる体重について少しずつわかってきたつもりです。周りから情報はもらっても、結局は自分で経験して判断するものだと感じています。
でも、先生のお話のように、行きすぎは将来の健康に影響することもある。だから、今は大丈夫でも何十年後にどうなるかを知っておくことも大事な経験なのかなと思います。
アオイさん
過去には食べなかったり吐いてしまったりした時期があり、その危うさを改めて実感しています。今も太りたくない気持ちはあるけど、食べることの大切さを知ったからこそ、玄米に変えるなど無理のない方法を選ぶようになりました。
ただ、眠気やだるさ、頭痛などの不調は今もあるので、社会人になったらもっとつらくなるのではと不安もあります。今日の話を聞いて、朝はヨーグルトだけでも食べる、移動で階段を使うなど、4月からの生活に向けて少しずつ整えていこうと思いました。
モエさん
平均体重より軽くても自分は調子がいいと感じていますが、筋肉量は少ないと思うので、これからは体づくりを意識したいと思いました。
また、SNSの中の言葉がコンプレックスを刺激することもあるので、スマホを見すぎない時間を作ることの大切さを改めて感じました。
田村先生
社会人になる前から、どういう生活が自分にとってベストかというのを試してみるといいと思います。それでルーティンになっていけば、危険なほど調子を崩すことは減りますし、逆に調子が悪くなったときに何が足りないのかが振り返れると思います。自分の「この食べ方で、この寝方で、この運動で、このくらいの体重だといい」ということは出てくるかもしれないので、そういう感覚と体重のバランスを取りながら、自分の「調子がいい!」という感覚を一つのバロメーターにするのもよいのでは、と思っています。

健康の視点で食事・運動・睡眠のサイクルをしっかりと整えることを心がけましょう!具体的には、「ちゃんと3食食べる」「1日8,000歩歩く」「1日7時間寝る」といったことを続けることが大事なのですね。
体重やBMIといった数字は、確かにひとつの目安にはなります。しかし、本当に大切なのは数字には表れない“ここちよさの感覚”です。朝の目覚めの軽さや呼吸のしやすさ、食後のリズム、心の落ち着きなど、日々のここちよい感覚の積み重ねが、未来の自分の健康を守る確かな指標になります。自分のペースで、自分に合ったカラダとの付き合い方を選んでいくこと――それがウェルビーイングに向けた確かな一歩です。
親御さんからお子さんへ、未来の健康についてそっと話してみるきっかけとしても、この記事を活用していただけたら幸いです。
田村 好史先生

順天堂大学大学院医学研究科スポーツ医学・スポートロジー / 代謝内分泌内科学 教授
順天堂大学国際教養学部 グローバルヘルスサービス領域 教授(併任)
1997年順天堂大学医学部卒業。カナダ・トロント大生理学教室で糖脂質代謝の研究に従事。2005年順大大学院博士課程修了後、2007年より同大医学部内科学代謝内分泌学講座准教授。2016~2018年にスポーツ庁参与を務めた。2017年より順天堂大学国際教養学部 グローバルヘルスサービス領域教授(併任)に。2021年からはスポートロジーセンター・センター長補佐(併任)。2024年から同大学大学院医学研究科スポーツ医学・スポートロジー教授、代謝内分泌内科学教授を併任。糖尿病の臨床のほか、インスリン抵抗性や異所性脂肪、やせ女性の代謝・健康問題、運動療法などに取り組む。「医学的に適正な体型を自分の意志で選択できる社会」を目指す、「マイウェルボディ協議会」の代表幹事も務める。2009年度日本体質医学会研究奨励賞、2018年度日本内分泌学会研究奨励賞を受賞。