
日常の「これって普通?」を、やさしく解きほぐしていく医師監修のQ&Aシリーズです。花王が行ったアンケート調査で集まった、女性のカラダとこころにまつわるリアルな疑問をもとに、各分野の専門医がお答えします。
第1回は、PMS(月経前症候群)について、PMSの専門家である産婦人科医の武田 卓先生に解説いただきました。生理前のモヤモヤからセルフケア、受診の目安についても教えていただきました。
PMS(月経前症候群)とは
PMSは、生理期間が始まる 3~10日前に現れる、身体的・精神的な症状の総称です。症状の有無や程度、どんな症状が現れるかには個人差があることを前提に、下腹部痛やイライラ、眠気、肌荒れなどが代表的な症状です。


生理前になると肌荒れがひどくなり、もともと持っているぜんそくも悪化することがあります。これもPMSですか?
(20代・会社員)

生理前の肌荒れは PMSの一種として見られることがありますが、ぜんそくの悪化は PME(月経前増悪)の可能性があります。
PMSでは、ホルモンの変動により肌荒れや湿疹などが現れることがあり、花王の調査(2019年/N=10,000)では約10%の方が肌荒れを感じると答えています。
一方、もともとあるぜんそくやアトピーなどの症状が生理前に悪化する場合はPMSではなく、PMEにあたることがあります。PMSとPMEでは治療方針が異なるため、一度婦人科で相談することをおすすめします。

PMSの症状に個人差があるのはなぜ?何が違うのかな……?
(30代・主婦)

ホルモンの変動に対する感じ方に個人差があるためと考えられています。ただし、その仕組みや詳細はまだ明らかになっていません。
また、ストレスや生活リズム、睡眠不足などの外的要因も影響するといわれています。実際に「仕事の環境が変わったら症状が軽くなった」というケースもあり、心身のバランスが大きく関係していると考えられています。

毎月、PMSのつらさにばらつきがあるのですが大丈夫でしょうか?
(30代・会社員)

PMSのつらさが月によって違ってくることは、珍しいことではありません。ストレスや睡眠、食事、体調などの影響で症状が強く出る時期もあれば、軽く感じることもあります。
2~3ヶ月ほど記録をつけてみると、自分のリズムや傾向が見えてくることがあります。ばらつきを感じる方は多いですが、生活に支障が出る場合は早めに婦人科に相談してみましょう。

生理痛とPMSは関係があるのですか?
(20代・大学生)

生理痛は【子宮の収縮による痛み】、PMSは【ホルモン変化による心身の不調】と原因は別ですが、関係はあると考えられています。
血の巡りが悪くなっているということでは共通しており、東洋医学では瘀血(おけつ)といいます。このことを踏まえると、強い生理痛がある方はPMSも重くなりやすい傾向があります。


病院にかかるのはけっこう抵抗があります。病院に行く前に自分でできることはありますか?
(20代・フリーランス)

あります!まずは、睡眠・食事・運動のバランスを整えること、自分の PMSパターンを知ることから始めてみましょう。
軽い場合はセルフケアでコントロールできることもあります。PMSの時期に無理をしないように調整したり、睡眠や軽い運動でリズムを整えたりしましょう。
また、いつ・どんな症状が出るかを記録してみるのもおすすめです。アプリでも手帳でもOK!2~3ヶ月続けると自分のパターンが見えてきます。記録をもとに家族に相談したり、病院を受診したりするのもよい方法です。

PMSを和らげるために、すぐに始められる対処法を教えてください。
(30代・会社員)

まず、【睡眠・食事・運動】の3つを整えることが基本です。
睡眠は6~8時間を目安にしっかり取り、食事は朝食を抜かずに3食食べましょう。週に2~3回、軽いウォーキングなどの有酸素運動を入れると血流がよくなり、症状がやわらぐことがあります。
さらに、お風呂に少し長めに浸かる、温かい飲み物を飲むなど、カラダを温める習慣もおすすめです。

PMSを和らげるために、おすすめの食べ物は?
(30代・主婦)

牛乳やチーズ、青魚、ナッツ、豆腐、ごまです。
研究で有用性が報告されているのは、これらの食材に含まれている【カルシウム・ビタミン B6・マグネシウム】になります。魚に含まれる【EPA・DHA】もよいとされています。
なお、「コーヒーはPMSに悪い」という説は、最近の大規模調査(※)で否定されています。日中、適度に楽しむのはよいです。
(※)Am J Clin Nutr2016 Aug;104(2):499-507. doi: 10.3945/ajcn.115.127027.


自分の症状やつらさで病院に行く程度なのか、迷ってしまいます。
(20代・大学生)

患者様と向き合っていて、「もっと早く受診してくれたらよかったのに」と感じることは少なくありません。 PMSチェックリストがありますので、確認しながら「もしかしたら?」と思ったり、つらさが続いたりするようでしたら、妊娠・出産をメインとする産科より、PMSなど生理にまつわる不調については婦人科のほうが相談しやすいかもしれません。低用量ピルや抗うつ薬(SSRI)、漢方薬など、医師はあなたに合った治療法を一緒に考えます。
PMSチェックリストや症状の記録を持って行くと、よりあなたの症状が伝わりやすく、相談もしやすくなると思います。

PMDDというのがあると、最近聞きました。PMDDはPMSとどういう関係がありますか?
(30代・自営業)

PMDD(月経前不快気分障害)は、PMSの延⾧線上にある【こころの症状が強く出る状態】と考えられています。イライラや気分の落ち込みなどが特に強く、日常生活に支障が出ることもあります。
PMSとPMDDはまったく別の病気ではなく、つながりのある関係です。生理前のつらさが続くときは早めに婦人科を受診して相談してみてください。

婦人科と精神科、どちらの科に行けばいいですか?
(30代・会社員)

まずは、【女性のカラダとこころ】に力を入れている婦人科を受診してみましょう。
婦人科の中でも『女性医学学会』に所属する女性ヘルスケア専門医なら、心身の両面から診てもらえることが多いです。内診の有無が気になるかもしれませんが、症状によって変わってくるので先生に相談してみましょう。必要に応じて精神科や心療内科と連携してもらえる場合もあります。

(武田 卓先生)
PMSのつらさは人によっても、同じ人でも月によって違うことがあります。症状が軽いときは武田先生のアドバイスにもあったように、睡眠・食事・運動などを整え、2~3ヶ月ほど記録をつけて自分のリズムを知ることが、セルフケアの第一歩になります。できることから始めてみてください。
ただし、つらいときは我慢をしたり、「これくらいで行ってもいいのかな」と迷ったりせず、婦人科に相談してみてください。自分を労わることは、セルフケアのひとつです。「そういうことだったのか!」「よく理解ができた」と感じたら、「知ってほしい」と思う友人やパートナーにも話してみてくださいね。あなたからのひと言が、お互いを思いやるきっかけになるかもしれません。
#モヤモヤ相談室のハッシュタグをつけて、SNSでもシェアしてくれるとうれしいです。
武田 卓先生

1987年大阪大学医学部卒業、1995年同大学大学院博士課程修了。2012年より近畿大学東洋医学研究所所⾧・同女性医学部門教授。東北大学医学部産婦人科客員教授。日本産科婦人科学会専門医、指導医。日本女性心身医学会副理事⾧。日本女性医学学会代議員、専門医、指導医。漢方・産婦人科・腫瘍・内分泌の専門医として、女性のヘルスケア全般を西洋・東洋医学の両面から研究している。