2024年3月12日
睡眠の質を上げよう!
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睡眠への関心が年々高まりを見せる中、昨年は大谷翔平選手の「10時間睡眠」が話題となりました。ヌートバー選手の食事の誘いを睡眠の確保を理由に断ったというニュースに、眠ることへの見方が変わった人も少なくないのでは。花王では、睡眠に対する意識や満足度などを調査。自分の睡眠をどう思っているのかひもときながら、より眠りを充実させるためのコツを紹介します。
花王の調査によると「自分のパフォーマンスは睡眠にかかっている」と答えた人は、ほとんどの年代で半数以上にのぼります。若い年代ほどその意識は高く、20代では70%。大谷選手と同年代でもある20~30代は、社会的にも働き盛りで育児に家事にと忙しい時期。睡眠の大切さを自覚しているようです。
「睡眠負債」という言葉も話題になりましたが、寝ないことが健康を害することも知られるようになってきました。睡眠不足になると、体だけでなく脳の働きも低下。怒りっぽくなったりケアレスミスを起こしやすくなるだけでなく、認知症との関連などさまざまな研究が進んでいます。睡眠の取り方は、私たちの体と心を大きく左右し、まさしくパフォーマンスの決め手となってくるようです。
睡眠を大事と考える一方で、自分の睡眠に満足している人はわずか20%でした。8割の人は量や質に何らかの不満を持っていることがわかります。
不満の理由を見ると、年代による悩みの傾向があります。高齢の人ほど「夜中に目が覚める」「朝早く目が覚める」といった睡眠そのものの悩み、若い人は「朝起きても精神的な疲れ・ストレスが取れていない」「朝起きられない」という眠りの結果に対する悩みが大きくなっています。
睡眠の実態について、睡眠の専門家である(株)ニューロスペース代表取締役社長C E Oの小林孝徳さんにお話を聞きました。
小林孝徳(こばやしたかのり)さん
株式会社ニューロスペース 代表取締役社長CEO
新潟大学理学部素粒子物理学科卒。自身の睡眠障害の経験をきっかけに、この社会問題を解決すべく、2013年12月株式会社ニューロスペースを設立。大学や医療機関と連携し、『法人向け睡眠改善プログラム』を開発。学校現場でも『睡眠教育』の普及に取り組み、生きる上で大切な知恵である睡眠を教育で学べるよう多くの機関と連携を推し進めている。
ここ数年に関していえば、コロナ禍も睡眠に影響を与えています。在宅勤務の定着によって、通勤時間を睡眠に充てたりお酒の場も減ったりと、睡眠が改善した人が多かったんです。昨年頃から出社が増えてきて、満足度はまた少し下がってきました。
アスリートの方は、ハイパフォーマンスのためにいかに効果的に睡眠を取るかということを重要視されています。寝ることで昼間の練習を体に定着させるんですね。文字で表現できる記憶は睡眠の前半で定着することが知られていて、ピアノや昼間の練習など身体が覚える記憶は後半で定着がされます。朝起きた時に不思議と前日に出来なかったことが出来るようになっているのはこれが理由です。
睡眠は技術で、生きていく上での大切な知恵です。食事・運動と並んで健康の基礎なので、本来は学校で学んでおくべきと思っています。まずは、自分の睡眠に興味を持つことから始めてほしいですね。
睡眠への意識や取り巻く環境も変化している今、眠りへの意識をアップデートすることも大切かもしれません。
必要な睡眠時間は人それぞれ違います。その時間を見極める目安は、「起きた時にスッキリしているか」「日中に眠気で生活や仕事に支障を感じないか」「平日と休日の睡眠時間に2時間以上の差がないか」。このあたりを目安に自分に最適な睡眠時間がどれくらいかを探ってみましょう。
夜中に目を覚ましてしまうことが、必ずしも悪いことではありません。年代に関わらず、目が覚めたタイミングが寝始めてから3時間以降、再び眠るまでが30分以内、日中の活動に支障がない場合であれば、問題ない可能性が高いです。必要以上に「寝なくては」と思いすぎると、かえって眠りにくくなることもありますので、あまり焦らずに。
たとえば帰りの通勤電車でウトウトするのは、睡眠が良くない証拠。ビジネスパーソンには、昼間30分以内の仮眠は午後の仕事効率を上げるには有効です。ただ、気を付けたいのが高齢者の方。日中の活動が少ないのに昼寝するのは逆効果。眠るのに必要な体力も使い、夜の睡眠が悪くなります。日中はなるべく体と頭を使うことを心掛けてみては。
睡眠の質を上げる3つの法則
睡眠の質を上げるためには、自分の睡眠を知ることが大切です。今はスマホのアプリや腕時計型など、睡眠を計測するデバイスもいろいろあります。精度には差もありますが、睡眠をデータで見るという体験は感動的。毎日どのくらい寝たのか、平日と休日の睡眠時間の差を把握できたり、規則性も見えてきます。生活習慣を変えることで睡眠のデータは良くも悪くもなるので、こうしたツールを上手に活用することも一つの手段です。
パフォーマンスという意味でいうと、短期間で成果を感じられるものは比較的少ないですが、眠っている間には免疫力を上げる成長ホルモンも分泌されます。2週間から1ヶ月ほど睡眠を15分増やすとか起床時間をそろえていくと、リズムが整い健康にはポジティブに働きます。
日本は、世界的に見ても睡眠時間が少ない国。睡眠時間を犠牲にして頑張るという文化も根強くあります。現在の生活で理想的な睡眠を得ることはなかなか難しいと感じる人も多いと思いますが、取り入れられそうなコツを試すことも日々の眠りの助けとなるかもしれません。睡眠を、疲れを取るための「マイナス」を「ゼロ」にするものから、自分のパフォーマンスを上げる「プラス」なものとしての視点で、改めて考えてみるのもよいのではないでしょうか。
【調査概要】
「睡眠に関する意識調査」
◎2023年7月/インターネット調査/首都圏在住20~60代男女/1,954人