2024年11月12日
「なんとなく不調」は要注意!
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40~50代は社会的な責任が増し、家庭では子どもの教育、親の介護などさまざまな役割を担うようになる一方で、確実に体は変化し不調も増える年代です。女性の更年期不調だけでなく、最近は男性の更年期やミッドライフ・クライシス(中年の心の危機)も注目されています。40~50代男性は、いま自分の体と心とどう向き合っているのかを探ります。
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2008年以降、特定健康診査(通称メタボ健診)や特定保健指導(生活習慣病リスクの高い人への生活習慣改善の指導)の導入、企業でのストレスチェックの義務化、新型コロナ禍の影響などもあり、40~50代の健康行動はこの10年間で高まっています(花王調べ)。
健康には「運動」「睡眠・休養」「食事」のバランスが重要ですが、男性が女性より実施率が高い健康行動は「ウォーキング」(39%)、「定期的にスポーツ」(26%)の2つのみ。「睡眠を十分にとる」、「適度な休養」、「ゆっくり入浴」や、「3食きちんと食べる」、「食物繊維をとる」、「夜遅い時間に食事をしない」など、睡眠・休養や食事に関することは、女性に比べ実施が低いのが実情です。
女性は生理周期によって体調が揺らぎやすく、睡眠不足や食事の乱れを肌の調子、体型変化でも敏感に感じやすい一方、男性は体力があるためか、睡眠や休養、食事への配慮を怠りがちなのかもしれません。
自分が健康と思う割合にはあまり年代差がなく、40~50代男性も約7割は「自分は健康」と思っています(花王調べ)。その一方で、ほとんどの人が何らかの不調を感じています。半数以上が感じている不調*には「筋力の低下」(72%)、 「よく眠くなる、しばしば疲れを感じる」(68%)、 「関節や筋肉の痛み」(66%)、 「早朝勃起の回数の減少」、 「からだの疲労や行動力の減退」、「性的能力の衰え」、「総合的に調子が思わしくない」「イライラする」「睡眠の悩み」などがあります。
1つ1つは加齢変化や疲れによる一時的なものかもしれませんが、長引くようなら「いつもの不調」と油断するのは禁物です。これらは、男性ホルモンの減少によって生じる男性更年期障害(LOH症候群)のセルフケアチェック指標となる不調でもあります。
加齢変化や更年期を認めたくないという心理もあるのか、家族の心配をよそに自分の体のことを顧みない男性は少なくないようです。受診するか迷ったら、セルフチェックで簡易診断する方法もあります。必要に応じて医療の手を借りることも大切です。
主人は働き盛りの40代後半、疲れや体力の衰えは老化現象と決めつけています。プライドもあるため更年期障害で病院に行くなんて全く考えたことはないと思います(目に見えないものは信じないタイプ)。(40代女性)
父はきっと更年期だったと思う。精神的に不安定で不機嫌なのが当たり前、体調が悪くても薬は飲まないし、病院行ったらと何度言っても聞く耳持たず。ずーっと体調悪いアピールをしていてすごくイヤでした。(40代女性)
気温の変化に対応できない自分がいます。いつもの不調なのか、新たな不調なのか判断しづらい。何科を受診したらいいか情報不足で困っている。(50代男性)
40~50代男性の約7割は、ふだんの生活でストレスを感じています(花王調べ)が、仕事や人間関係のストレスは、自分ではどうにもできない部分もあります。好きな音楽を聴いたり、趣味に没頭したり、一人で静かに過ごすなど自分に合ったリラックス法で、自分のご機嫌は自分でとってストレスはためないことが大切です。
この年代は、これまでの人生や将来について悩んだり、不安や焦燥感を抱くミッドライフ・クライシス(中高年の心の危機)に陥りやすくなります。
男性は年齢を重ねるにつれ、日頃から頻繁におしゃべりをする友人のいる割合が減る傾向にあり、「愚痴や弱音は話したくない」という思いが強いと、悩みを一人で抱えてしまいがちです。解決策は見つからなくても、話すだけでストレスや悩みが軽くなる体験が、男性にも必要なのかもしれません。
生活習慣病の増加とともに、医療の重点は「病気は治す」から、最近は「病気になる前の予防」へ移り変わっています。
人生100年といわれる時代では、40~50代はまさに折り返し地点です。人生の後半の過ごし方は、趣味、孫育て、移住、長く働き続けるなど選択肢が多様になりました。いずれにおいても土台になるのは、自分の健康、いかに健康寿命を延ばせるかです。ちょっとした習慣や考え方を見直し、体や心のケアをすることは、自分の健康を守ることにつながります。この時期に自分の体と心に向き合い、これからの人生をアクティブに過ごすための準備を始めましょう。
【調査概要】
「生活者の意識と行動に関する調査」
◎2024年9月/インターネット調査/首都圏在住20~60代男女/3,078人
◎2022年12月/インターネット調査/「くらしの研究」読者/6,189人
「暮らしと健康に関する調査」
◎2021年12月/インターネット調査/首都圏在住40~50代男性/10,895人
田中俊之(たなかとしゆき)先生
大妻女子大学 人間関係学部准教授
1975年生まれ。博士(社会学)。男性学を主な研究分野とする。日本では“男”であることと“働く”ということとの結び付きがあまりにも強すぎると警鐘を鳴らしている。
男性には若い頃から不真面目や不健康を許容したり、自慢する文化があります。男性は更年期に限らず、「自分の体の不調を見逃しがちな人間である」と、まずそこを知ることが大事です。
生涯という視点で考えると、家族の有無に関わらず、職場以外に居場所を作っておくことも大切です。近所であいさつを交わす人、趣味の仲間、親しい友人関係などを、日常生活の場で早くから作っておきましょう。SNSのつながりも、ないよりはあった方がいいでしょう。
男性は雑談する力が弱く、人に自分のことを相談する必要性を感じないところがあります。相談できる人になるには、雑談力も必要。雑談のキャッチボールを続けるコツは、「人の話を否定しない」「人の話に割り込まない」「仕事の話をしない」が基本です。