2024年12月3日
あなたならどうしますか?
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これまでもMy Kao くらしラボでは、誰もがイキイキと暮らせる多様な社会を考えようと、知る機会の少ない身体に障害のある人の暮らしやその記事への反響を紹介してきました。障害と聞くと、自分との距離を感じてしまうこともあるかもしれません。一方で、近年では耳が聞こえない主人公を描いたドラマや映画が話題になったり、パラスポーツの国際大会が行われたりと、普段の様子が垣間見える機会もありました。
今回の特集は、視覚・聴覚に障害のある人とのコミュニケーションがテーマです。自分だったらどうするか、想像しながら読んでみてください。
※当サイトでは、視覚障害のある方が利用するスクリーン・リーダー(コンピュータの画面読み上げソフトウェア)が正確に読めるように、「障害者」を「障がい(さわりがいと読み上げられる)」ではなく「障害」と表記しています。
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今回、視覚や聴覚に障害のある436人に「見えにくさ」「聞こえにくさ」による困難を感じる生活場面、接し方やサポートで困ったことやうれしかったエピソードなどについて調査しました。
視覚・聴覚どちらにも共通していたのは、ご近所や友人といった人付き合いでの場面でした。コミュニケーションを取る上での大変さがうかがえます。
今回の調査から浮かび上がってきたのは、周囲の理解不足や無意識の思い込みによって生じる課題でした。それによって障害のある人が、思っていることが伝わらないつらさやジレンマを感じていることがわかります。
「見えないからこれはできないと思う」と、職場の人に勝手に判断されてしまい、悲しい思いをした。(20代女性)
普段外出時に視覚の代わりに頼りにしている周囲の音が、風の強い日には聞こえなくなるためつらい。理解してもらえず、仕事を休めなかった。(50代女性)
視覚に障害があるといっても、見え方やできることは人によって異なります。「見えない=できない」と判断されてしまうことで、傷つくケースもありました。
また視覚に障害がある人は、音を頼りに移動しています。いつもならできることも、雨や風、雷など天候の悪い時や、混雑していて騒音のある場所では音が聞き取りづらく、困難が生じる場面もあるようです。
病院やお店、職場などで聴者(聞こえる人)と行動していると、自分のことでも自分に話しかけてもらえず、隣の聴者に話をされる場面がある。自分が無力な存在のようで悲しい気持ちになる。(40代女性)
職場での立ち話に入りづらく、仕事の情報を逃していないか、やる気がないと思われないか心配。キャリアアップや知識の向上の妨げになっていそうでイヤ。(20代女性)
「聞こえない」「聞こえにくい」人といざ接するとなると、勇気が出せずにためらってしまうこともあるのではないでしょうか。「聞こえない人と接したことがないから、きっとコミュニケーションは取れない」「手話ができる人から伝えてもらえばいい」「決まった話だけ伝えて問題ないならいい」とコミュニケーションを諦めてしまう場面も見受けられます。
コミュニケーションがうまくいかないこともある一方で、理解や配慮を感じられるやりとりをうれしく思う場面も多くあるようです。
職場では、「声でのコミュニケーションが大切」ということを理解してもらえている。話しかけるときに名前を呼んでもらえてありがたい。(30代男性)
仕事の時に、「これ」「あれ」などの指示語を使わずに案内をしてもらっている。回覧や記入時には代読・代筆をしてもらえるサポートに助けられている。(30代男性)
白いお皿の黄ばみやコップの茶渋が残っていて、遊びにきた友人に教えてもらった。汚れに気付けないからありがたい。(40代女性)
メイクが好きで自分に似合う色を探したくて、化粧品カウンターでいろんな色を試してみた。店員さんに感想や自分の印象について教えてもらえて楽しい。(30代女性)
視覚的な情報は伝わりづらいことを考えて、指示語ではなく具体的な言葉を使ったり、名前を呼んだりすることがまずはコミュニケーションの第一歩のようです。視覚でしか気付けないことなど、見えない人が気付いていないこともあります。そのようなことを教えてもらうとうれしい、という声もありました。
店頭で店員さんに、自分の聞こえにくさを伝えると、ジェスチャーや指差しなどで分かりやすく説明してくれた。どうにかして伝えようとしてくれてうれしい。(40代女性)
買い物の際、マスクを外して口が見えるようにして話してくれたり,筆談で対応してくれるなどお店の人の配慮がうれしかった。(50代女性)
職場のみんなが音声認識アプリを利用してくれている。(60代以上男性)
聞こえない人と話す際、口を見せて話すことや筆談でもコミュニケーションをとることはできます。音声認識アプリなどのデジタルツールを活用する方法もありますので、「伝えられない」と思い込むのではなく「伝えられる手段はある」と認識することから始めてみませんか。
視覚障害・聴覚障害と一口に言っても、見えない、聞こえない程度は人それぞれです。白杖や補聴器、手話を使っている人だけが障害があるわけではなく、外見からはわからないケースも多くあります。
私たちの日常の中で、見た目ではわからない事情を抱えている人々にも、出会うことがきっとあるはずです。
思い込みや決めつけをせず、相手の状況を想像してみる。思いやりを持って接することが、誰もが生きやすい多様な社会のために必要な第一歩なのではないでしょうか。
【調査概要】
「視覚障害者・聴覚障害者の暮らしに関する調査」
◎2024年5月/インターネット調査/視覚、聴覚いずれかに主な障害のある人/436人
◎2024年1、6月/インタビュー調査/視覚、聴覚いずれかに主な障害のある人/8人
【参考情報】
視覚・聴覚に障害がある方との接し方のポイント
障害がある人と接する時にどうしたらいいか、コミュニケーションやサポートの方法をまとめた ㈱ミライロの記事をご紹介します。