2025年5月27日
10年目を迎えるSDGs
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人類が地球で暮らし続けていくために達成すべき目標として「SDGs(Sustainable Development Goals)」が国連総会で採択されたのが2015年。今年で10年目を迎えます。私たち花王は2019年から毎年「SDGs」に対する人々の意識を追いかけてきました。今回の調査で浮かび上がったのは、「SDGs」は広く知られてきたのに、環境に対する行動は減少傾向にあるという現実。
気候変動や貧困といった課題が10年前よりも鮮明に見えるようになった今、私たちはどう向き合うべきなのか。目標の達成期限とされる2030年まであと5年、改めて「SDGs」について一緒に考えてみませんか。
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2019年の調査では「SDGs(持続可能な開発目標)を知っていますか」との問いに対し、過半数を超える65%の人が「知らない、わからない」と答えていました。今回の調査では、82%が「知っている」*という高い水準に達し、「内容を知っている」**人も57%まで増加しました。情報源としては20~60代男女の約7割がテレビ、学生になると学校が56%と、メディアや学校教育の影響が大きいようです。
SDGsでは、貧困や飢餓、教育、気候変動など社会・経済・環境の側面から17の開発目標が設定されています。そのうち生活者が貢献したい項目の上位は、「海や陸の豊かさを守る」「気候変動への対策」といった環境分野。特に既婚男女(20~60代)は関心が高く、未婚男女(20~30代)になると、貧困や飢餓、平等などの項目も入ってきます。
ここで気になるのが、環境分野への関心の割合。環境分野以外は5年前とあまり変動がないのに対して、既婚男性(20~60代)と未婚女性(20~30代)の「海の豊かさを守ろう」は2019年に比べて8%程度、「陸の豊かさを守ろう」は3~5%減少しています。その一方で、既婚女性(20~60代)は「気候変動に具体的な対策を」への関心が5年前より高まっており、引き続き環境分野へ関心を持ち続けている様子がうかがえます。
普段実践していることを聞いてみると、女性の方が男性と比較して20~25%ほど実施率が高く、環境に対する行動が定着していることがわかります。2018年と2024年で比較すると、2020年のレジ袋有料化もあって、エコバッグを持ち歩く人が男女とも大幅に増えました。他に実施率が上がったのは、マイボトルや水筒を持ち歩くこと。一方、その他の行動は男女ともに減少傾向が見られます。
年代別で見てみると、20~30代と40~60代では大きな差があることがわかりました。40~60代では、ほとんどすべての項目の実施割合が過半数を超えており、日頃の習慣になっているようです。
一方の若い世代では、エコバッグの持ち歩きは54%と半数を超えるものの、それ以外の項目ではいずれも低い結果となり、上の年代とは20%以上差があるものも多くあります。その理由はどこにあるのでしょうか。
環境にかかわる意識を聞いてみると、「環境問題は大きすぎて解決できる気がしない」 (20~30代45%、40~60代43%)、「環境によくてもお金のかかることはやりたくない」(それぞれ57%、54%)と、年代に限らず多くの人が思っています。差があるのは、「環境によくても手間のかかることはやりたくない」(20~30代50%、40~60代43%)、「環境によいことは、みんなでやらないと意味がない」(それぞれ56%、62%)という項目。
この差の背景には、育った時代の違いが影響していると考えられます。便利な時代に育った若い世代にとっては、たとえ環境によくても「手間のかかることはやりたくない」と感じやすい傾向があります。また、近所づきあいや地域での助け合いを経験してきた40~60代は、「みんなでやらないと意味がない」と考える割合が高いと考えられます。こうした意識の違いが、20~30代で環境に対するアクションを起こす人が少ない理由の一因となっているのではないでしょうか。
取り組みを続けていくためのキーワードは、「習慣化」。実践している人に聞いてみると、無理なく続けるには3つのポイントがあることがわかりました。環境にいいから、というだけでなく自分自身にとってプラスになることが大切なようです。続けていると次第に環境に負荷をかけることへの抵抗感や、大人を見て子どもが学んでいく期待感も生まれています。
冷暖房の設定温度を調整したりして、電気のムダづかいを減らしている。移動は車より徒歩や自転車で。エコにもいいし自分のための節約にもなるので、一石二鳥でしている感じ。(30代女性)
フードロスを減らすために、賞味期限が近い値引き商品を購入したり、食べきれる量だけを注文して食べ残しをしないようにしています。(60代男性)
マイボトルは多少手間だが、習慣化するとペットボトルを買いたくなくなる。捨てることに抵抗が出てきた。(40代女性)
日焼け止めの中にも、海に影響を与えるものもあると知って製品を選ぶようになった。海に行くことが多く、珊瑚などへの影響が気になる。もっと良いものがあれば知りたい。(30代女性)
詰め替えのある商品を選んで使っている。詰め替えをするとゴミが減る、焼却量が減るので空気にも良いと思う。(30代女性)
紙パッケージ品を選択するなど、環境問題に取り組む商品を出来るだけ選択する。(50代女性)
電気自動車を使い排気ガスを減らす。地球温暖化などが深刻でしっかりと対策しないといけないと思うし、汚い環境で暮らしたくないから。(30代男性)
家電や家具はしっかりした作りのものを買って、長く使いたい。洋服なども長く使っていると愛着が湧いて大事にしようという気持ちになる。捨てるものが減って、あまりゴミが出なくなるのは嬉しい。(30代女性)
買ったものはなるべく長く大切に使っている。ものを大事に扱うことなら自分でも出来ると思ったから。今後も続けていきたい。(50代女性)
購入したバイクや家電製品などが故障した場合に、買い替えるのではなく自分で修理して廃棄をしないようにしている。買う時に自力で修理可能かどうかをポイントとすることもある。(30代男性)
まだ使えるものはリサイクルショップへ。売れても安い金額なのでお金のためというより、せっかく使えるなら捨てるよりどこかに回したいから。自分の母親も物を大切にしていた。自分が母を見て思っていたように、子どもたちにも自分を見て感じてくれたらいい。(40代女性)
10年目を迎えて、多くの人に内容まで理解されるようになった「SDGs」。今回は、日常に溶け込んできたからこその難しさを感じる結果でもありました。環境への取り組みは、役に立っている実感を得にくく、忙しい時などはつい後回しになってしまうかもしれません。しかし実践している人の声を聞くと、エコカーや太陽光パネルのような大きな取り組みだけでなく、誰もが行える日常のちょっとした行動や心がけでも貢献できることを再認識させられます。
SDGsの達成期限となる2030年まで、あと5年。世代によって環境への意識や行動に違いはありますが、「環境によいことは、みんなでやらないと意味がない」と考える人も少なくありません。次の世代のためにも自分にできることは何か。いま一度、アクションプランを考えるきっかけにしていただけたらと願います。
【調査概要】
「環境・SDGsに対する意識と行動調査」
◎2019年8月、2020年10月、2021年9月、2022年11月、2023年12月、2024年11月/インターネット調査/首都圏在住20~60代男女/2019年1,395人、2020~2024年各1,400人
◎2023年9月/オンラインインタビュー調査/20~50代女性/10人
「生活者の暮らしに関わる意識と行動調査」
◎2018年11月、2024年9月/インターネット調査/首都圏在住20~60代男女/2018年2,740人、2024年3,078人
【参考情報】
国連広報センターより公開されている日常生活で簡単に取り入れられる行動をまとめたアクションガイドをご紹介します。
持続可能な社会のために ナマケモノにもできるアクション・ガイド(改訂版)(外部サイトへリンク)