【連載】毎月22日は # ふうふの日|ショートストーリー
ある土曜の昼。
妻がリビングで写真を広げていた。
妻と娘で行った沖縄旅行の写真のようだ。
ずいぶん味がある写真だ、と思っていると
横にフィルムカメラがおかれていることに気がついた。
「今どき珍しいな」と声をかけると
「彩夏が撮ったのよ。高校で流行っているみたい。これが逆にエモいって」
と妻は娘の口調を真似して答えた。
何枚か手に取り見ていると、最後の一枚で手が止まった。
妻がそれに気がつき、私の手元をのぞき込むと
「これは、最後に一枚余って」と焦って写真を取り上げた。
少し見切れた娘と驚いた顔の妻の写真だった。
「いいじゃないか」と言うと
「嫌よ。あの子、突然撮るから。変な顔だもの」と妻は言う。
「そうか?いつも通りだぞ」と返事すると
妻は言いかけた言葉を一度飲み込んで
「……あなたにはもう二度と見せない」
と写真を片付け、ひとりで出かけてしまった。
娘に相談すると
「ありえない。パパが1000%悪い」と強めにどやされた。
そして「迅速な謝罪とビオレ水肌記憶UVの献上を」と言うのだ。
「それで許してくれるか?」と聞くと
「それだけじゃ無理。どんなママも好き、って言うまでがセット」と的確に指南された。
父が戸惑うほど、わが娘、最強である。
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