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洗剤は、かつて石油から作られていた時もありました。洗剤には、汚れに吸着し、はがしてくれる「界面活性剤」が必要で、これをつくるためには油がいるのです。この油は、古くはヤシ油や牛脂を用いていましたが、石油化学の発達にともない、石油から多くの界面活性剤が作られたのです。しかし石油は有限の資源であり、地球温暖化の原因となるCO2をたくさん放出します。私たちは地球環境を保ち、かつ永続的に使え、CO2を吸収して成長するヤシ油に再び切り替えることにより、環境への負担を減らす工夫を行っています。
ヤシにはさまざまな種類がありますが、花王エコラボミュージアムでは洗剤の主原料としてココヤシとアブラヤシを展示しています。
アブラヤシの果肉からはパーム油が、種子からはパーム核油が得られ、さらにココヤシの殻は活性炭の原料にもなります。
渡されたタブレット上で、ヤシの実を採取して油を絞るまでを疑似体験することができます。
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しかし、いま地球上では人口が爆発的に増え、国連の予想によれば、2050年には全世界の人口は97億人を超すと言われています。それは、全世界が食料不足の問題に直面する時代が目の前にやってきていることをも意味しています。そして洗剤の原材料であるヤシ、それは、食料としても大切な植物なのです。世界的な食料問題がより深刻になったときに、そのヤシを洗剤の原材料として使ってよいのでしょうか。答えは「否」。私たちは早急に、別の原材料を探さねばなりません。
左側上がアブラヤシの実。鶏の卵ほどの大きさの赤い実がたくさん集まっています。右側下がココヤシの実、つまりココナツ。30cmほどの実の中に、油を含んだコプラが入っています。
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現在、未来の原料として脚光を浴びているのは「藻」です。天然由来で、食料ではなく、しかも同じ面積から作り出される油の量は、藻はヤシの10倍以上とも言われています。また、特殊な地理環境を必要とするヤシと異なり、さまざまな環境で、機械化による栽培も可能だと思われます。もちろん栽培時に使う電力などで、二酸化炭素を出さないような工夫が大前提ではありますが、そのような課題もふくめてこの研究が順調に進めば、現在ヤシが主原料となっている洗剤の材料は、徐々に「藻」にシフトしていくかもしれません。「藻」にはそれだけの大きな魅力・可能性があります。
温室内のリアクター 微細藻類の研究開発
培養後期になると油脂を生成します。