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*¹研究・健康レポート1
「慢性的な疲労の回復術 ~攻めの休養~」より
https://www.kao.com/jp/healthscience/report/report078/report078_02/


休日何もせずダラダラしたら、翌日の朝、かえって調子がよくない。長時間寝たはずなのに、なぜかだるい。そんな経験、ありませんか?
実はその原因、「休み方」にあるかもしれません。そのカギとなるのが、「アクティブレスト(積極的休養)」です。
睡眠に悩みを抱える200名を対象にした独自アンケート*²では、約7割が「朝すっきりしていない」と回答。さらに朝の不調に関しては「寝たはずなのに疲れが残っている・体がだるい」と感じている人が58.5%と最多でした。
*²アンケート出典:花王調べ/2026年3月、インターネット調査、対象:20~65歳・睡眠悩みを持つ人200人


「ちゃんと寝ているはずなのに疲れが取れない」——多くの人が感じるこの悩み、実は睡眠の質や量だけでは説明できないことがあるといいます。問題の根本は、休み方そのものにあるかもしれないのです。
この「休み方」を「休養学」として体系化したのが、医学博士・片野秀樹先生です。

博士(医学)、日本リカバリー協会代表理事
著書に、『休養マネジメント 「自分だけの休み方」が見つかる忙しい人のためのリカバリー戦略』(かんき出版)、『休養学』『疲労学』(東洋経済新報社)など
「休んだはずなのに、疲れが取れない」
——そんなお悩みをよく耳にします。でも、それは意志の問題でも根性の問題でもありません。休み方そのものに原因があることが多いんです。よく私がお伝えするのが「スマートフォンの充電」の例えです。

スマートフォンを50%のまま使い続けると、すぐに電池が切れてしまいますよね。実は多くの人の休み方も、これと同じ状態です。
活動で減ったエネルギーは回復しきらないまま次の日へ(図1)。その繰り返しが、疲れをため込む原因になります。

※電池の図は休養の考え方を示すイメージです。回復の程度には個人差があります。
そこで重要なのが、「活力」を意識的にプラスすること(図2)。ただ休むだけでなく、活力を加えることで、回復度はぐっと高まります。
この発想が「攻めの休養」。
軽い運動による休養(アクティブレストまたはアクティブリカバリー)は、この「活力」を生み出す代表的な手段のひとつ。軽く体を動かして血流を促し、「ただ安静に休む」だけでは届かなかった100%のフル充電状態に近づけます。

「疲れたら横になる」と思いがちですが、スポーツ医学の世界では“あえて軽く動く”ことで疲労感の軽減が期待される「アクティブレスト※」が注目されています。
※アクティブリカバリーと呼ばれることもあります。
アクティブレストとは、疲労を感じているときに、あえて軽い運動で血流を促し、疲れを残しにくくする休養法。もともとはプロスポーツ選手のコンディショニングとして実践されてきましたが、現在は運動習慣のない人にも取り入れやすい方法として広がっています。

アクティブレストの対となるのが「パッシブレスト(消極的休養)」。ソファで横になる、ひたすら寝るといった、体を動かさない回復法がこちらにあたります。




「疲れているのに動いたら逆効果では?」——そう感じるのは自然なこと。でも実は、科学的なメカニズムを知ると、軽く動くことがよりリフレッシュにつながる理由がよくわかります。
ふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」とも呼ばれています。筋肉が収縮・弛緩するポンプ作用が、静脈血を心臓へと送り返す役割を担っているからです。
じっと横になっていると、筋肉は動かずこのポンプが機能しにくくなります。この還流障害が疲労感につながる要因のひとつと考えられています。

一方、軽く体を動かす(=アクティブレスト)と筋ポンプが動き出し、静脈の還流が増加。
デスクワークで長時間同じ姿勢が続いている人ほど、この“詰まり”が生じやすいため、30分〜1時間に一度立ち上がって軽く動き、筋ポンプを動かしてあげましょう。

体の疲れだけでなく、現代のデスクワーカーが抱える疲れの多くは「情報疲れ」の側面も。集中力の持続、意思決定、コミュニケーション——仕事中は交感神経が優位な状態が続きやすく、脳もフル稼働し続けます。
軽い有酸素運動を行うと、働き続けていた脳と体がリラックスモードへ切り替わりやすくなり、心身のバランスを取り戻しやすくなります。
また、歩いたり体を動かしたりすることで「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンの分泌が促され、ストレスケアや気分のリフレッシュにつながりやすいこともわかっています。

アクティブレストは、その日の疲労対策だけにとどまりません。運動でのリフレッシュや心身のリラックスの結果、快眠やすっきりとした目覚め、日中の調子の維持につながる——つまり、「今日の疲れを取る」だけでなく、「明日のパフォーマンスを上げる」習慣でもあるのです。

さらに、睡眠に悩みを抱える200名を対象に独自アンケートを実施したところ、疲れの原因や実際に試している対策のリアルな実態が見えてきました。みなさんの声を通じて、現代人の“疲れのなぜ?"を一緒に探ってみましょう。
アンケートで、「朝起きられない・疲れが抜けない原因」を聞いたところ、こんな結果が明らかになりました。
注目したいのは、1位の「加齢」、4位の「運動不足」、5位の「冷え」のいずれもが、血流の低下とも関わっているという点。
「なんとなく疲れやすくなった」と感じはじめた人ほど、アクティブレストを取り入れる意義は大きいといえます。
アンケートでは、実際に試している疲労対策と、継続している対策についても聞きました。
試した率も継続率も、1位「入浴」2位「ストレッチ・軽い運動」という順位はぴったり一致。入浴は「動く」わけではありませんが、全身の血流が促進されるため、これもアクティブレストの1つ。上位2つは、まさにアクティブレストの基本メニューそのものです。現代人は精神疲労が多く肉体疲労が減少していると言われています。そのバランス維持にも、アクティブレストは有効です。多くの人がすでに無意識のうちにアクティブレストを実践・体感しているのかもしれません。
次は誰でも手軽に取り組める、具体的なアクティブレストメニューを紹介します。

アクティブレストは、特別な道具も場所も必要ありません。日常のちょっとした行動のなかに取り入れられるものばかり。みなさんもすぐに始められる5つのアクティブレストメニューを紹介します。
最もシンプルなアクティブレスト。通勤時に一駅分歩く、お昼休みに10〜15分だけ外を散歩する、それだけで十分です。
日頃の生活習慣にも取り入れやすいので、まずは「帰りに一駅だけ歩いてみる」など、気軽に始めてみましょう。


ウォーキングをするうえで大切なのが「歩く時の姿勢」です。せっかく歩くなら、猫背や前かがみの状態にならないよう背筋を伸ばし、骨盤を立てた状態で歩くことを意識してみましょう。
花王ヒューマンヘルスケア研究所の研究でも、歩行中の身体アライメント(骨格・関節・筋肉などの位置関係やバランス)のゆがみが、慢性的な疲労と関係している可能性があることが報告されています。

姿勢を整えるアプローチのひとつとして、歩行時のバランスをサポートするアーチサポートインソールの活用も選択肢のひとつ。同研究では、アーチサポートインソール着用により歩行時の骨盤角度に変化がみられたことも確認されています。

軽く体を動かしたあとに入浴時間を組み合わせることで、気持ちを切り替え、Wのリフレッシュ時間として取り入れたりする人もいます。
「動く」アクティブレストとは少し異なりますが、入浴も全身の血流を促進し、心や体をリフレッシュできる休養法のひとつです。
また、花王では、25年以上にわたり入浴に関する研究を続けており、炭酸ガス(CO₂)を溶け込ませた入浴剤による温浴時の身体変化についても研究が進められています。
※入浴剤の効能・使用方法については、各製品の表示をご確認ください。無理のない範囲で行い、体調不良時、飲酒後、めまいがある場合は避けましょう。

オフィスで大きく動けないときでも、座ったままでできるアクティブレストがあります。



30分〜1時間に一度、1〜2分のこうした「ちょこっと動き」を取り入れるだけで血流のケアにつながり、また、気分の切り替えやリフレッシュにも。
長時間のデスクワークは猫背・前かがみの姿勢を招きやすく、同じ姿勢による負担につながりやすい点にも注意が必要です。

全身の巡りを意識しながら体を伸ばすストレッチは、アクティブレストの定番メニュー。
ヨガは呼吸法と組み合わせることで、ゆったりした気分転換にもつながります。
独自アンケートでも「ストレッチや軽い運動」は取り入れやすく続けやすいことがうかがえます。


水中では全身に水圧がかかり、浮力によって関節への負担も軽減されます。そのため、体に疲れがあるときでも無理なく体を動かしやすいのが特徴です。
泳ぎが苦手な人は、水中ウォーキングから始めるのもおすすめ。アクティブレストとして取り入れやすいメニューのひとつです。



ただ動けばいい、というわけではありません。片野先生の「攻めの休養」という考え方をベースに、アクティブレストをより効果的に取り入れるためには、いくつかのコツがあります。
アクティブレストとパッシブレストは、対立するものではなく“両輪”。うまく組み合わせることで、自分の心身に合った心地よい休養につながります。

質の高い睡眠はパッシブレストの代表格。アクティブレストで促された血流とセロトニン分泌により、睡眠をより心地よく感じやすくなるといわれています。動いて休む、しっかり休む——この両方を意識するだけで、休み方の満足感が変わってくるでしょう。
アクティブレストで最も大切なのが、強度を上げすぎないこと。目安は「少し息が上がるけれど、隣の人と会話できる」レベルで、ウォーキングなら時速5〜6km(やや早歩き)ほど。疲れがひどい日はストレッチや入浴だけでも、十分アクティブレストになります。

猫背や前かがみの姿勢は、特定の部位に負担がかかりやすくなり、体の重だるさにつながることがあります。
花王の研究(2025年)でも、歩行時の体のアライメント(姿勢のゆがみ)と日常的な疲労感との関連が報告されています。
意識的に背筋を伸ばし、骨盤を立てて座るだけでも体幹の筋肉が使われ、プチ・アクティブレストに。
壁に背をつけて立ち、後頭部・肩甲骨・お尻・かかとの4点がつくかどうかを確認するシンプルなセルフチェックで、姿勢の状態を把握してみましょう。
姿勢を見直すことは「疲れにくい体」の土台作りにもなります。

筋トレを習慣にしている人は、「休息日に何もしない」よりアクティブレストを取り入れると回復が早まりやすいといわれています。
軽い運動で血流を促すことで、コンディションを整えやすくなると考えられています。

動いて休む日本人の約8割が疲労を自覚しているにもかかわらず、多くの人が「しっかり休んだはずなのに、疲れが取れない」という悪循環に陥っています。片野先生の休養学が示す原因はシンプル。今の休み方では、心身のエネルギーが“フル充電”まで至っていないから。

そこで注目されているのが「攻めの休養」。休養に「活力」を加えてフル充電へ持っていく能動的な休み方です。アクティブレストはその中の「運動」タイプの代表的手段。

メニューはより正しい姿勢でのウォーキング・入浴・ストレッチなど幅広く、そのコツも難しいものはありません。
「今日の帰りに一駅歩いてみる」「今夜はゆっくり湯船に浸かる」など、まずはそんな小さな一歩から。休み方を変えるだけで、明日の自分が少し変わるかもしれません。
