2025年10月14日
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体調不良で思いがけず嘔吐してしまうと、本人も、周囲も慌ててしまいがちです。床や衣類に嘔吐した際は、初期対応と後片付けのポイントを知っておけば、汚れやニオイの広がりを抑え、衛生的に対処できます。ここでは、家庭でできる嘔吐汚れの処理のための基本的な4つの心得と掃除、洗濯の方法を紹介します。
【監修者】
藤井 健吉 さん
花王衛生科学研究センター
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赤ちゃんのミルクの吐き戻し、洗濯してもニオイや汚れが残って困った経験はありませんか?嘔吐物には食べ物だけでなく、胃酸や胃酸に分解されたタンパク質などが含まれています。ニオイが強いだけでなく、酸性が高いため床や衣類を傷めることがあります。時間をおかず、適切に対処することが大切です。また、吐いた原因が、感染性の病気の可能性もあるので、吐いた後の掃除や洗濯は除菌を意識しましょう。
再度吐くことも考慮して、エチケット袋やポリ袋をセットした蓋付きバケツを準備しておくと安心です。
あると便利:
万が一に備えて、家庭内感染のリスクを減らすためにも、掃除に使うものはできるだけ使い捨てのものを使います。除菌に使う塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム溶液)は、必ず水で薄めて使います。
嘔吐物は胃酸を含むため酸性で、塩素系漂白剤を原液のままかけると有毒な塩素ガスが発生する危険があります。掃除中は窓を開けて換気するのを忘れずに。
塩素系漂白剤を希釈した液は、次亜塩素酸ナトリウムが分解されやすく効果が持続しません。希釈液は使用の都度、必要な量をつくるようにして下さい。
①身支度をする
使い捨てのマスク、手袋、エプロンを着用し、自分の身を守る
②漂白剤を薄める
水に塩素系漂白剤を入れて薄め、次亜塩素酸ナトリウム0.1%溶液を用意する。
(ふき取り用にキッチンペーパーをファスナー付きポリ袋に入れ、0.1%溶液をしみ込ませておくと便利)
③ポリ袋を用意する
処理したものを入れるポリ袋を2重にしてセットする。
(バケツや段ボール箱を使うと安定)
①飛散や接触を防ぐため、新聞紙やキッチンペーパーで嘔吐物を覆います。
②窓を開けて換気します。
③嘔吐物を新聞紙やキッチンペーパーごと、周囲から中央へ集め、こぼさないようポリ袋に入れます。(牛乳パックや厚紙をチリトリ代わりにすると集めやすい)
④汚れが付いた床と周辺を、次亜塩素酸ナトリウム0.1%溶液をしみ込ませたキッチンペーパーで覆い、10分以上浸してから拭き取ります。その後、キッチンペーパーなどで水拭きします。
⑤使用したキッチンペーパーなどは、すぐに2重にしたポリ袋に入れ、内側の袋の口をしっかり結びます。(次亜塩素酸ナトリウム0.1%溶液が残っていたら、ポリ袋の中に注ぎ入れる)
⑥マスク、手袋、エプロンは汚れた面を触らないよう外してポリ袋に入れ、外側の口をしっかり縛って廃棄します。
タンパク質を含む嘔吐汚れは、乾くと水に溶けにくくなり、落ちにくくなります。嘔吐した衣類やシーツなどは、乾く前に早めに対処することが大切です。嘔吐で汚れた衣類やシーツ類を漂白剤を使って除菌する際には、塩素系漂白剤の使用が推奨されています。ただし、布の染料まで作用し脱色する可能性があるため、色柄ものには酸素系漂白剤を使ったやり方も紹介します。
あると便利:
衣類やシーツに嘔吐してしまった場合、状況に応じて3つの処理方法から判断します。
洗濯する時は、他の洗濯物とは別に洗濯しましょう。
●関連リンク
いずれの対処をする場合も、前準備をしてから始めます。
①身支度をする
使い捨てのマスク、手袋、エプロンを着用し、自分の身を守る
②ポリ袋を用意する
処理したものを入れるポリ袋を2重にしてセットする
(バケツや段ボール箱を使うと安定)
③固形物を取り除く
周囲に汚れを広げないよう、新聞紙や使い捨てのキッチンペーパーなどで嘔吐物を覆い、外側から内側に静かに拭き取ります。固形物はティッシュなどでつまんで取り除き、使ったペーパー類は、2重にセットしたポリ袋に入れます。
嘔吐した人のケアや、他の家族の世話などで時間がなかったり、汚れが広範囲だったりすることもあります。廃棄することも選択肢に入れておきます。
ノロウイルスの場合は廃棄をおすすめします。
①汚れた衣類やシーツ類をポリ袋に入れる
固形物を取り除いた衣類やシーツ類は、汚れた面が内側にくるようにまとめ、静かに2重にしたポリ袋に入れ、内側の袋の口を縛ります。
②手袋、エプロン、マスクを安全に外して、手洗い
使い捨て手袋、エプロン、マスクは汚れに触れた面を触らないように外し、ポリ袋に入れ、外側の口をしっかり縛って廃棄します。
白無地の衣料で塩素系漂白剤が使えるものは、予洗いした後に塩素系漂白剤でつけ置きして除菌し、洗濯機で洗濯します。
①洗濯の前に予洗い
固形物を取り除いた衣類やシーツ類は、汚れた面を内側にして、静かに移動用のポリ袋に入れて浴室に運びます。汚れに漂白剤や洗剤成分が十分に働くよう、シャワー流水か、バケツにぬるま湯をためて静かにもみ洗いします。
予洗いで使った場所や道具は、必ず除菌します。シャワー流水での予洗いは手軽ですが、その後の除菌や掃除は、浴室の洗い場周り全体と広範囲になります。バケツなら、洗い終わった水をトイレに流すこともでき、除菌は狭い範囲ですみます。
②つけ置きして除菌
予洗いした衣類を軽く絞って、次亜塩素酸ナトリウム0.02%溶液に30分つけ置きします。
③洗濯
つけ置きしたものを軽く絞って、洗剤を使い洗濯機で洗濯します。脱水が終了したらすぐに干して、しっかり乾かします。
④手袋、エプロン、マスクを安全に外して、手洗い
使い捨て手袋、エプロン、マスクは汚れに触れた面を触らないように外し、ポリ袋に入れ、外側の口をしっかり縛って廃棄します。
色柄ものや塩素系漂白剤が使えない衣類やシーツなどを洗う際は、工夫が必要です。
(予洗いの方法は、➋で紹介した内容と同様)
①高濃度の洗剤+酸素系漂白剤につけ置き
予洗いしたものを軽く絞って、普段の洗濯より濃い濃度の洗剤と酸素系漂白剤を溶かした液で1~2時間つけ置きします。酵素入り洗剤を使うとより効果的で、酵素がよく働く30~40℃のぬるま湯に溶かして使います。
洗剤の表示の成分のところを見ると、酵素が配合されているかどうか確認できます。
②洗濯
つけ置きしたものを軽く絞って、洗剤を使い洗濯機で洗濯します。脱水が終了したらすぐに干して、しっかり乾かします。
③手袋、エプロン、マスクを安全に外して、手洗い
使い捨て手袋、エプロン、マスクは汚れに触れた面を触らないように外し、ポリ袋に入れ、外側の口をしっかり縛って廃棄します。
嘔吐で汚れた衣類やシーツ類を洗濯する手順を一覧にしてみました。
更にこんな工夫も効果的。
「洗濯機の洗濯時間を長めにする」、「洗濯機でのすすぎ回数を増やす」、「乾かした後アイロンで熱処理」
参考文献:Merettig N, Bockmühl DP. Virucidal Efficacy of Laundering. Pathogens. 2022; 11(9):993.
嘔吐物に触れた可能性がある手袋の外側に、なるべく触れないようにして外していきます。片方はずしたら、脱いだ手袋はもう片方の手で握って、残りの手袋を外すと一つにまとめて捨てられて安心です。
マスクは外側になるべく触れないようにして外していきます。
①ごみ箱の近くで、耳にかけた紐を持って、左右同時に外します。
②マスクの外側が、下にくるようそのまま直接ごみ箱に捨てます。
(嘔吐対処に使用した使い捨てマスクは、使い回さない)
嘔吐汚れの対処は、迅速性と安全性が最も重要です。慌てず、適切な防護をして、状況に応じた方法を選択しましょう。迷ったら汚れた衣類の廃棄も選択肢のひとつ。何より大切なのは、自分の安全を守りながら対処することです。万が一に備えて、必要な用品を家庭に常備しておくと安心です。