2025年12月16日
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時代と共に変わり続けている私たちの暮らし。ここ10年間でも「インバウンド」「キャッシュレス決済」「A I」「地球沸騰化」など、様々なキーワードが話題になっています。コロナ禍の経験も、暮らし方や働き方に影響を与えました。
私たちの価値観がどう変わったのか。10年間の生活意識調査をもとに、今回は家族との距離感や人付き合いの変化について考えてみます。
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「現在の生活に満足していますか」との問いに「そう思う」「ややそう思う」と答えた人の割合は、10年間でほぼ横ばい。既婚男性、既婚女性とも6割台を保っています。家族とのコミュニケーションについては、男女とも約8割*は良好と考えています。比較すると女性の方が男性より年代を問わず割合がやや高い傾向が見られました。


「家事の分担をしている」「子育ての方針を夫婦で話し合う」といった項目は、男女ともに右肩上がりで10年前より10%以上スコアが伸びています。「ワンオペ」という言葉も生まれましたが、女性1人に偏りがちだった家事や育児も家族でシェアすることが定着してきました。特に今の40代以下は男性も中学・高校で家庭科を学んでいる世代。共同で家庭運営をしていくという考え方が当たり前になってきたと思われます。家族仲が良好な背景の1つには、男性の家事・育児への参加や協力する姿勢の変化があると考えられます。



「家族のコミュニケーションは良好である」と同様に「家族との時間は大切だ」と考える割合も男女ともに86%(2024年)と高い結果でした。
一方で、「お互い干渉しない家族がいい」と答える割合は、男性で53%(2014年)から71%(2024年)、女性で59%から74%と大きく伸びています。「家族も大切だが自分のことを優先させたい」と考える割合は、女性が10年間で15%アップし60%になり、家族を優先しがちだった時代から意識が大きく変わってきていることがわかります。
結婚・出産後も働き続ける女性は、年々増え続けています。家族も「やってもらう」のではなく「自分でできることは自分でする」と自立・協力するようになり、加えて女性の「自分のことにも時間を使いたい」との思いが、家族との適正な距離を求めることにつながっているのではないでしょうか。


家族それぞれの個性を尊重し合える生活(既婚女性20代)
家族が空気のような存在で、一緒に過ごしていても、家の中で別々に過ごしていても居心地がよいこと(既婚女性40代)
家族それぞれが、ストレスがたまらない程度の自分の時間を持ち、健康で、自立している(既婚女性60代)
束縛や制約がなく、家族の仲は良いが、あまり干渉しない生活(既婚男性60代)

家族との距離感をはかるのと同じように、人との付き合い方にも変化が見えます。特に女性で「人付き合いはわずらわしい」と感じる人の割合が増加し、「人とのつながりを積極的に持ちたいと思っている」割合は大きく減少しました。
コロナ禍では人との接触が制限されて、人付き合いにも大きな影響がありました。無理して付き合っていた人とは疎遠になるなど、人との関係を見直すきっかけになったという声もありました。またフルタイムで働く人が増えたからか、時間に余裕がなくちょっとしたおしゃべりの付き合いが減ったり、SNSでの情報過多が人付き合いのストレスや気疲れを増幅させたりしているのかもしれません。
一方で、協調性を大切にする意識は、変わらず高いままです。直接会う機会は減っても、SNSやオンラインツールといった、時間や場所を選ばずに人とつながる手段が増えました。そうした環境の変化が、互いに無理をしない関係性を保つ助けになっているのかもしれません。手段は変われど、人とうまくやっていくために協調することは、廃れない価値観なのではないでしょうか。
今回は人との付き合い方についてクローズアップしましたが、この10年間に「無理をしない」という大きな流れができたように思います。家族も大切だけどまず自分のことを優先的に考えたい家族関係や、気疲れしない人付き合いを求める「自分ファースト」な価値観。自分を尊重し大切にするようになった背景には、「男だから」「女だから」というジェンダーが背負ってきた役割が薄れてきたことが考えられます。肩の力を抜いて、自分らしく無理をしない。最近ブームの「推し活」も、その流れの一つです。自分らしさを肯定し、ジェンダーや年齢に関係なく、自分の好きな趣味をより積極的に楽しむ人が増えました。
今は家族や人とのつながりは、「深さや広さ」よりもお互いの「心地よさ」が重視される時代。自分も相手も無理せずに、近すぎず遠すぎない距離感をとっている。それを探ることが、これからのこころ豊かな暮らしにつながっていくのかもしれません。あなたにとって「ちょうどいい距離感」とはなんでしょうか。一緒に考えてみませんか。
【調査概要】
「生活者の暮らしに関わる意識と行動調査」
◎2014年、2016年、2018年、2020年、2022年、2024年(各年9月)/インターネット調査/首都圏在住20~60代既婚男女/2014年1,796人、2016年1,821人、2018年1,910人、2020年1,892人、2022年1,811人、2024年1,811人