【新連載】毎月22日は # ふうふの日|ショートストーリー
「ねぇ、髪やって?」
新年度がはじまって、数週間。
僕の大事なはぁさんは、慣れない仕事にちょっぴりお疲れ気味。ときどきドライヤーを手に、僕のもとにやってくる。
はぁさんは髪が長くて多いから、濡れた髪を乾かすのが億劫でたまらないそうだ。
確かに毎日は大変だよな。僕はたまにだからいいけれど、と思い
「大変だから短くしたら?」とはぁさんの髪を乾かしながら言うと
うとうとしていたはぁさんが、突然バッと振り返り
「……もういい」と、自分で髪を乾かしはじめた。
心配になり、様子を見ていると、髪を乾かし終えたはぁさんが、もう一度振り返ってこう言った。
「私はくせっ毛でうねりも気になるし。長さがないと、ぶわってなるの」と。
訳も分からず、僕が首を傾げると、はぁさんは続けて、
「……大変だったよね。ごめん」と言って、ひとりで寝てしまった。
……違う、そうじゃない。
なんとか誤解を解かねば、とスマホと格闘すること数時間。メルト、というシャンプーを見つけた。はぁさんみたいに、髪のうねりが気になる人にいいらしい。
明日、これを渡して伝えよう。
「髪を乾かすのは全然嫌じゃない。
僕はただ、はぁさんにラクになってほしかっただけなんだ」と。
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