【連載】毎月22日は # ふうふの日|ショートストーリー
玄関の隅で、スニーカーたちは、少し疲れた顔をして並んでいた。
二人で選んだ白いスニーカーが、くすんで汚れている。
「最近お出かけしてないね」
「ずっと出番を待ってる」
和也はスニーカーたちからそんな声が聞こえた気がした。
一念発起して、粉のワイドハイターでつけおきしてみると、
みるみる白さが蘇ってきた。
「僕も早く散歩したいよ」和也はスニーカーに微笑みかけた。
週末、和也はパートナーと洗いたての白いスニーカーを履いて出かけた。
スニーカーたちは久しぶりの外出にはしゃいだ。
「角に素敵なお店ができたね」
「川原にあじさいが咲いてるね」
並んで歩くふたりの足元で、スニーカーたちは楽しくおしゃべりをはじめた。
「また一緒に歩けるなんて最高だね」
「これからもずっとこうしていたいな」
久しぶりの冒険に足取りは軽くなった。梅雨の晴れ間の町に、
二足のステップは永遠に続くダンスのように弾んだ。
帰宅後、彼女は和也に微笑みかけて言った。
「ぴかぴかのスニーカーで、楽しかった。ありがとう」
「このところ忙しかったから。二人の時間を作りたくて。
そしたら二人のスニーカーをきれいにしたくなったんだ」和也は照れた。
「僕も楽しかったよ。また並んで歩こう」
二足のスニーカーも玄関に並んで、にこにこと笑っているようだった。
花王 作成センター
※ワイドハイターPRO 粉末は2025年6月16日から出荷開始です。