【連載】毎月22日は # ふうふの日|ショートストーリー
金曜日。街はハロウィンに浮かれている。
つい仕事に没頭してしまった私は、早く帰ってお風呂に浸かりたい一心で家に向かう。
玄関を開けると、まさにお風呂へ向かう夫と目が合った。
「おかえり。あ、さっと入っちゃうから、ちょっと待ってて!」
そういう問題じゃないし。今すぐ入りたかったのに。お風呂という至福を、私がどれだけ心待ちにしていたか。
まったくわかってない…。
「あがったよ~」
呑気なその言葉で、まどろみから覚める。全身はまだぬくぬくとした眠りの中。目を閉じたまま「うーん」とうなる私に、何も言わずに立ち去った。
と思ったら、少し経ってバタバタと戻ってきた。
「今バブ入れてきた。ミルキーなのに強炭酸なんだって。
疲れ回復にいいらしい」
ふて寝だと気づいてるくせに、めげずに続ける。
「あがったらアイスもあるよ。ハロウィンだから特別に高いやつ買っといたんだ~。あとで一緒に食べよ」
…仕方ない入るか。うっすら目を開けると、白いタオルを被ったおばけが、こちらを見降ろしていた。
思わずふふっと笑ってしまう。あーもう。ニヤついたのを髪でごまかして、気だるそうにリビングを出る。
まったく、私の機嫌の取り方だけはわかってるんだから。
花王 作成センター
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