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どうして同じスキンケアをしても、効果の出る人と出ない人がいるのだろう。もしかしたら、同じ肌トラブルでも、人によって原因が異なるのではないか…。
今回、花王が世に送り出した「スキンポテンシャルアナリシス」※は、肌の内部を詳細に把握し、その人固有の肌状態や、その原因を知ることで、一人ひとりに合った的確なケアの提案を可能にする花王史上最高レベルの肌解析サービス。メインになったのは、皮脂から採取されるRNAの情報を精緻に把握する「皮脂RNAモニタリング」という花王独自の極めて先進的な技術です。
※「皮脂RNAモニタリング」と「コルネオスペクトル解析」をもとに肌を精緻に把握する花王史上最高レベルの肌解析
「適切なケア方法を見出し、悩み続ける人を一人でも減らしたい」。そんな花王の研究員の想いから誕生したこの肌解析サービス。スキンケア研究所の菊池研究員と、生物科学研究所の大矢研究員の奮闘ぶりを取材しました。
<プロフィール>
菊池 祥 (きくち・しょう)
2008年花王入社 スキンケア研究所
「肌測定や、スキンケア商品評価の研究成果をもとに、製品やサービスの開発をしています。今回のスキンポテンシャルアナリシスは、肌のお悩みに対して、お客さま一人ひとりが自分の肌状態を知り、自分にとって的確なケアを見つけることをサポートするサービスです。多くの方に知っていただき、一人ひとりの肌に真に寄り添っていきたいです」
<プロフィール>
大矢 直樹(おおや・なおき)
2009年花王入社 生物科学研究所
「花王の製品・サービスの礎となる皮膚科学の基礎研究を行っています。スキンポテンシャルアナリシスでは、皮脂RNAに含まれる肌内部の情報によってその人の“肌の今”を解析しています。お客さまの肌に寄り添い、今後もさらなる発展をめざしていきます」
――従来の肌測定は、肌の見た目や、計測機器で得られる数値から、主に肌表面の状態を知るものでした。それに対し、「スキンポテンシャルアナリシス」は、肌内部の情報を利用する点が画期的です。開発のきっかけは、何だったのでしょうか?
スキンケア研究所 菊池:美容分野では、一人ひとりの肌のお悩みに合わせ、パーソナルな提案をすることが時代の潮流になっています。そうした背景を受けて、私たちスキンケア研究所でも、お客さま一人ひとりの肌に寄り添うにはどうしたらいいか日々考えていました。
生物科学研究所から、新しい技術「皮脂RNAモニタリング」の報告を受けたのは、ちょうどそんなときです。一人ひとりの肌状態の固有の原因を解析し、自分にとって的確なケア方法をサポートする真のお客さまサービスにつなげていけるのではないかと、開発に向けて動き始めました。
――メインとなる「皮脂RNAモニタリング」は、どんな技術なのですか?
生物科学研究所 大矢:「皮脂RNAモニタリング」は、皮脂中にRNA(リボ核酸)が存在することを発見し、そのRNAを分析する花王独自の先進技術です。
みなさんよくご存じのDNAは、顔の形や体質など、生まれ持った特徴を決める遺伝子の設計図で、一生変わらないものです。
一方のRNAは、DNAの情報に基づき、酵素をはじめとしたさまざまな働きをするタンパク質を生み出すもととなる物質で、体の部位や組織ごとに種類や量が異なるほか、そのときどきの体調や環境によっても日々変化します。
すなわち、RNAを把握することは、さまざまな理由で変化する“肌の今”を知るのに有効で、そのときどきの状態に寄り添って、適切なケア方法を提案できるようになります。
——そもそも皮脂RNAに着目したのはなぜですか?
大矢:すべてが始まったのは、一人の研究員のひらめきからでした。
それまで肌のRNAは、外科的な方法で採取した皮膚でしか解析できないというのが生物学の定説でした。しかし、皮脂の分泌機構に着目し、皮脂の中にもRNAが含まれているのでは、という仮説が立ったのです。皮脂なら、皮膚を傷つけることなく、拭うだけで手軽に採取できるので、お客さまに向けたサービスとして大きなメリットになると思いました。
——皮脂の中のRNAでも肌の状態がわかるのでしょうか?
大矢:皮脂を拭うだけで採った皮脂RNAの情報が、外科的な方法で採取した場合と同じRNAの情報であるのか。アトピー性皮膚炎の方々の皮脂RNA解析を皮切りに、数千人規模に及ぶ研究を実施してきました。その数年に及ぶ検証をくり返した結果、ついに皮脂を拭うだけで採った皮脂RNAから、外科的な方法で採取した場合と同様の、肌の状態を反映したRNAの情報が得られることが確認できました。
——そこから先は、「皮脂RNAモニタリング」を実際のお客さまサービス「スキンポテンシャルアナリシス」に結びつけていく過程ですね。ここにも幾多の困難があったのでは?
菊池: 「皮脂RNAモニタリング」は花王独自の先進的な技術ですので、他に参考にできる例がありませんでした。皮脂RNAに含まれている情報をどのように使って、そのときどきの肌の状態に寄り添ったお客さまサービスを設計・検討していくのか。その過程にたくさんの困難がありました。
春夏秋冬、一年を通して、多くの方々の皮脂RNAを採取・分析。皮脂RNAの情報から肌の状態を予測するために膨大なデータを蓄積し、一つひとつスキンケア研究所と生物科学研究所が共同で検証してきました。また、研究員など専門家でない方が採取した皮脂からでも解析ができるかという検証も繰り返し行ってきました。
こうして、花王史上最高レベルの肌解析サービス「スキンポテンシャルアナリシス」が誕生しました。「皮脂RNAモニタリング」に、肌の角層の分析結果を組み合わせ、美しい肌にとって重要である肌のバリア機能、紫外線に対する感受性、糖化の状態といった12の指標を解析。それぞれ今の自分の状態が同年代100名中の何位に相当するかという順位として判定し、今の自分の肌の状態と、それがなぜ起こっているかを知る手がかりとして表示します。
——皮脂を拭ってから、解析し、結果が出るまでは、どのように行われるのですか?
大矢:お客さまは、キットを使って自宅で皮脂と角層を採取し、ポストに投函していただくだけです。届いたら、我々研究員が解析し、結果をお返しします。
RNAは非常に壊れやすい不安定な物質で、研究現場では分解を抑えるためにドライアイスに詰めて送るのが通常です。しかし、そのような煩雑さがあっては、お客さまサービスとして成り立ちません。ポストに投函という手軽な方法を採用するために、常温で送れるキットの開発にも並行して取り組みました。
——お客さまが自宅で簡単に採取するキットにも、重要な技術が詰まっているのですね。
大矢:ポスト投函を可能にしたのは、新たに開発した保存安定化技術です。あぶらとりフィルムで皮脂を拭い、保存安定化剤の入った容器に入れるだけで、我々のもとに届くまで常温で数日かかっても、安定して皮脂RNAを保てるようになったのです。
——「スキンポテンシャルアナリシス」は、2022年末からサービスの限定導入が始まりました。今、お2人はどんな達成感を感じていらっしゃいますか?
菊池:「保湿ケアは十分していたけれど、紫外線によって乾燥しやすいという解析結果が出た。UVケアを念入りにすることで、さらなる美肌をめざせることがわかってうれしい」。体験いただいた方から、こうしたお喜びの声をたくさん頂戴しています。
ダイエットもそうですが、スキンケアも効果が出ると前向きに取り組んでいただけるようになると思うんです。一人ひとりに合った、的確なケア方法をサポートできる満足度の高いサービスになったことをとてもうれしく感じています。
大矢:皮脂を拭うだけで手軽に皮脂RNAが採取でき、膨大な肌内部の情報が一度に得られる。研究者にとってはそれだけで十分感動ものなのですが、一歩進んで、お客さまの満足につなげられたことが、花王の技術者として一番の喜びです。この技術は、今後ますます発展が期待できるので、「スキンポテンシャルアナリシス」のさらなる進化や、それに続くサービスにも期待していただきたいです。
菊池: これからも技術をひとつずつ形にして、美しい肌と、その先のお客さまの人生の伴走者になれたらうれしいです。
大矢: そんな想いを胸に抱いて、研究を続けていきたいですね。
花王史上最高レベルの肌解析サービスには、先進の技術だけでなく、「適切なケア方法を見出し、悩み続ける人を一人でも減らしたい」。という研究員の想いも込められていることを知り、胸が熱くなりました。このサービスが、一人でも多くの方に届き、日々の暮らしがより快適なものになっていけばいいなと願っています。最後までご覧くださりありがとうございました!