※花王公式noteより
介護を担う社員が増えることを早くから予測し、必要な両立支援制度を整備。お互い様の精神で、仕事と介護を両立する社員を理解する風土づくりにも努めてきた花王。
このたび、「仕事と家庭を両立できる社会」をめざして協働してきたJALさんと、「仕事と介護の両立」をテーマにした勉強会として、JAL社員向けセミナーを開催することになりました。これから先、介護がますます大きな社会課題となることを見据え、両社が手を取り合う意義とは?花王の人財開発部門の手塚・ビジネス開発部門の是本と、日本航空 人財本部の上野さんに、「仕事と介護の両立」にかける熱い想いをうかがいました。
本記事では、2024年6月に開催されたセミナーの様子も紹介します。
INDEX
<プロフィール>
手塚 ひとみ(てづか・ひとみ)
花王グループカスタマーマーケティング株式会社
人財開発部門 キャリア開発部 DE&I推進グループ
仕事と育児や介護の両立支援や障がいのある社員の活躍支援を中心に様々な社員がイキイキと活躍できるように日々活動。
是本 真紀歩(これもと・まきほ)
花王グループカスタマーマーケティング株式会社
ビジネス開発部門
『環境』『美』『健康』『衛生』を重点課題とし、SDGsの観点で社会貢献をめざす活動を企業様と実施。
上野 桃子(うえの・ももこ)さん
日本航空株式会社 人財本部 人財戦略部
DEI推進グループ アシスタントマネジャー
障がいのある社員の活躍推進とJALの特例子会社の主管部業務、また、LGBTQの理解促進を担当。今回はDEIを推進するなかで、花王の介護両立支援にご賛同くださり、社内イベント「JALグループ Diversity Day」にて仕事と介護の両立セミナーを担当。
——花王は、「仕事と介護の両立支援」に早くから取り組んできました。どんなきっかけや想いがあったのでしょうか?
花王 手塚:古くから女性社員の活躍の場の拡充を進めてきた花王では、1990年代から、女性社員の就業継続支援の一環で「仕事と育児・介護の両立支援」をスタートしました。2008年に実施した将来予測で「10年後には、介護責任を負う社員が倍に増え、約6人に一人になる」との試算が出てからは、介護との両立支援に本腰を入れています。
「社員一人ひとりが仕事と生活を両立しながら、意欲と能力を存分に発揮して活躍することを支援します」という両立支援方針を定め、「一人ひとりが自ら主体的に行動できる」「お互い様の意識を持って助け合える」ことをめざし、介護両立を可能とする環境整備を進めています。また、介護に関わる社員の調査も実施し、介護責任を負う社員が抱える課題は「心理的負担」「時間的負担」「経済的負担」の3つに大別され、なかでも心理的負担が大きいこともわかりました。心理面で社員の不安を払拭するには、介護に直面する前の早い段階から支援制度を理解して安心感を持ってもらうことや、お互い様の精神で、いつでも上司に相談し、周囲に頼れる社内風土を醸成しておくことも非常に重要です。
介護休職、看護・介護特別休暇や遠隔地勤務制度などの介護両立支援制度の拡充に加え、介護の基礎知識、社内外の支援制度や当事者社員・上長それぞれ向けのコミュニケーションの手引きをまとめた「介護両立ハンドブック」を作成しました。また、社員が介護について知り、自ら仕事と介護の両立体制を整えることができるようになることや、介護している社員の状況を理解し配慮できる周囲者を増やすことを目的として、外部講師を招いたセミナーを開催しています。
——今回、JALさんと取り組むことになった経緯を教えてください。
花王 是本:JALさんとは「ラク家事セミナー」を開催するなど、昨年から「仕事と家庭を両立できる社会」をめざして協働をスタートしています。その会合を重ねるなかで、「仕事と介護の両立支援についても一緒に取り組むことができないか」との打診を受けました。
仕事と介護の両立は、今後、社会の大きな課題になることが予想されます。会社に相談をせず、一人で抱え込み、介護をきっかけに離職してしまう「介護離職」の増加も懸念されるなか、リスクを未然に防ぎたいとの想いが一致し、花王が介護両立支援に取り組んできた経験を活かし、共同で勉強会を開催することになりました。
——JALさんでは、社員の「仕事と介護の両立」のためにどう取り組んでいらっしゃるのか、現状をお聞かせください。
JAL 上野さん:「両立支援制度」の拡充や、テレワークやフレックスといった「働き方の選択肢」を増やしたことで、仕事と介護を両立している社員は徐々に増えています。実際に両立を経験した社員からは、「会社の制度が整っていたので、働き方を柔軟に選択しながら両立することができた」との声が届いています。
一方で、DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に関してアンケートをとると、「介護は育児と違って先が見えないから不安」「いつか自分も…と思いながら、何から始めたらいいかわからない」といった声が上がってくるのも事実です。こうした漠然とした不安を抱えた社員をどうサポートしていくかが、弊社の課題です。
将来の介護離職を防ぐには、介護に直面する前から両立支援制度を知ってもらい、周りの社員の理解を得ながら安心して両立できる社内の風土を醸成していく必要があります。
——その状況のなか、花王に介護をテーマに声をかけてくださったのはなぜですか?
上野さん:花王さんが、早くから介護との両立について真摯に取り組んでいらっしゃったことを知り、非常に感銘を受けました。ぜひ、その取り組みを参考にさせていただきながら、弊社においても介護と両立しながら働く環境づくりにつなげたいと思いました。
——今回の勉強会では、JAL社員の皆さまに、どんなことを伝えたいですか?
上野さん:JALグループでは、毎年6月に「JALグループ Diversity Day」という社内イベントを開催しています。社員がダイバーシティを体感して、理解を深めることが目的です。今年は「先進企業・有識者から学び、ダイバーシティに飛び込もう」をテーマに、三部構成で開催。花王さんには、「介護と仕事の両立 Tips Basic ~介護と仕事を両立するための心構え編~」と題してお話しいただきます。介護に対する“心の持ち方”のヒントが得られ、社内風土づくりのきっかけになればと期待しています。
手塚:花王の生活者研究では、高齢の親と子の関係性やコミュニケーションの実態などを探索し、人生100年時代の親と子の関わり方を提唱してきました。
今回は、その研究結果に基づき、介護の予備知識に軽く触れつつ、人生100年時代を生き抜くための「親子の関わり方」をメインに、介護の心構えについてお伝えします。チェックシートで親との関わり方を振り返ってもらった後、日ごろ、職場であまり話題に上ることのない親との関わり方を、グループに分かれて話してもらう予定です。この機会に少しでも“気づき”を得て、家族と一緒に過ごす時間を増やしていただけたらとてもうれしいです。
——JALさんとの勉強会を通じて、花王がめざしているのは、どんなことでしょうか?
手塚:介護は誰にでも起こりうること。お互い様の精神で、職場だけでなく、どの立場の人とも理解し合える社会の雰囲気が出来上がってくると、誰もが安心して仕事を続けていける未来がつくれるのではないでしょうか。
両立しながら安心して働ける会社を一つでも増やすことに、少しでも貢献できたらうれしいです。今回のJALさんとの取り組みは、その第一歩だと考えています。
6月某日にJAL本社で開催された「JALグループ Diversity Day」。会場で参加された約45名のJAL社員を対象に、「介護と仕事の両立 Tips Basic ~介護と仕事を両立するための心構え編~」と題したセミナーを行いました。
初めに、今回の介護をテーマにした勉強会開催の橋渡し役となった、花王の是本が登壇し、ごあいさつとともに花王の自己紹介をいたしました。
そして、花王の手塚が登壇し、人生100年時代に親子の良好な関係を築くための心構えについてお話ししました。参加者が介護を自分ごと化するきっかけにしてもらえるように、親子関係を振り返るグループワークを通じて、参加者同士で話していただく機会を設けたり、「花王の社員も、“上長の協力がなかったら無理だった”と口をそろえて言います。管理職の方は、介護当事者を理解し、お互い様のムードをつくっていただけたらと思います」など、花王の実際の状況を紹介しました。
続いて、JALの上野さんがご登壇。「制度は整っているので、仕事と介護との両立のために、活用していただきたいです。同時に、介護はみんなで支えていくものだという風土をつくっていくことも大事です。今日はぜひ、“みんなで支える介護”というキーワードを覚えて帰っていただけるとうれしいです」と、すでに整備されている会社の支援制度と、今後めざしていきたい社内の風土について話されました。
次に、支援制度を使って仕事と介護を両立された日本航空 CX戦略部の埋金(うめがね)さんが、「親は子どもが苦しんでいる姿を見るのはつらいもの。使えるものは全部使って、楽をしていいと思います」など、自らの体験談をお話しされました。
最後に、花王の是本より、介護にお役立ていただける花王の製品をご紹介。「今日の気づきを持ち帰り、大切な家族との接点を増やしていただけたらうれしい」との想いを胸に、1時間半に及ぶセミナーは締めくくられました。
人生100年時代となり、高齢化が進む中で、ぼんやりと不安に思っていた親の介護。それほど遠くない未来に、自分自身も当事者になることを考えながら、心構えや支援制度の把握とともに、みんなで「お互い様」と支えあえる職場であることも、とても重要だと感じました。育児とともに、介護との両立支援も広がり、「介護離職」せずに働き続けられる社会になって欲しいです。