2026年2月10日
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日本は地震や台風、集中豪雨などの自然災害が多く発生します。さらに、社会インフラの老朽化に伴う道路陥没や配水管の破損など、ライフラインを脅かす事故も増えています。この特集では20~60代、70代高齢の方、障害のある方を対象にした3つの調査結果から、現状の課題と災害にどう備え対応すべきかを考えます。災害を「自分ごと」として捉え、具体的な備えを一緒に考えましょう。
※当サイトでは、視覚障害のある方が利用するスクリーン・リーダー(コンピュータの画面読み上げソフトウェア)が正確に読めるように、「障害者」を「障がい(さわりがいと読み上げられる)」ではなく「障害」と表記しています。
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地球温暖化の進行に伴い、大雨や極端な降水現象の発生頻度と強度が増大することが予測されており、これまでに想定していなかった頻度や規模で災害が発生する懸念も高まっています。
出典:文部科学省及び気象庁「日本の気候変動2025 — 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書 —」(外部サイトへリンク)
気象災害だけでなく、私たちの足元にある「社会インフラの老朽化」も深刻な課題です。下水管破損による道路陥没事故などが報告されており、今後の急速な老朽化が懸念されています。高度成長期以降に整備された水道・下水道などの社会資本は、今後20年で建設後50年以上が経過する施設の割合が加速度的に高まります。



地震や浸水・豪雨による施設損壊、配水管の老朽化・破損など、複合要因で発生する断水のリスクも今後高まることが想定されます。こうした背景から、日常生活での備え、自宅での生活を守る「自助」の重要性が増しています。
出典:国土交通省ウェブサイト「社会資本の現状と将来予測」「建設後50年以上経過する社会資本の割合」から抜粋(外部サイトへリンク)
調査は、以下の3属性を対象に行いました。
全対象者を通じて不安が最も高かったのは「地震」です。次いで「停電」、「断水」などのライフラインの停止や、「台風」、「暴風雨」などの自然災害が挙がりました。
対象者別では、「障害のある方」の不安度が最も高く、次いで「70代高齢の方」でした。避難の困難さだけでなく、家族に負担をかけるのではないかという不安も見受けられました。



数値データだけでは見えてこない、リアルな声を紹介します。
・ヘルパーさんや介助者が来れなくなって孤立し、一人では逃げられないから不安。(下肢障害/30代女性)
・自分の体を支えるのに精一杯で、家族の支えになれるのか、家族の重荷にならないか不安。(上肢障害/50代男性)
・負傷した場合、自分の健康状態でどこまで自分自身で行動できるか不安。(70代男性)
・高層マンションなのでどのように避難すればよいか。足腰が痛く階段での昇り下りが難しい。(70代女性)
また年代別では、20~30代は不安度が低い傾向にあります。地震に対しては半数以上が不安を感じているものの、他の項目は3割未満でした。



過去の災害経験が少ないことが、災害を「自分ごと」として認識しにくい一因と考えられます。
・災害が起こった時、どんな事で困るのかなどあまりイメージが湧かない。どこか他人ごとの様に感じてしまう。(20代女性)
「日頃から備えている」(「十分」+「ある程度」の合計)は、70代で58%、60代で53%と、高齢層では半数を超えています。
一方で、40〜50代は45%、20〜30代では40%にとどまり、若年層ほど対策が後回しになっている実態が浮き彫りとなりました。「全く備えていない」割合は、60代・70代は共に7%と最も低く、40~50代が11%、20~30代が21%で最も高くなっています。



また20~60代を単身者と家族と同居している人で比較すると、「全く備えていない」割合は、家族同居者の13%に対し、単身者では31%と、単身者の備え不足が顕著でした。



「あまり備えていない」、「全く備えていない」と回答した人たち(計1,415人)に対して「備えていない理由」を尋ねたところ、最も多かったのは、「面倒で後回しにしている」が38%でした。
「金銭的余裕がない」を挙げた人は31%いましたが、「何を備えればいいかわからない」が33%、「いくら備えても万全ではないと思っている」が23%など、家庭で何を備えればよいか、備えがないとどう困るのかを具体的にイメージできていない様子が見受けられます。
若年層や単身者では、「誰かが助けてくれる」という意識が見られました。
・コンビニもあるし、モバイル充電器があれば、会社や避難所が何とかしてくれる。(単身/20代男性)
・天災は、こうしておけば大丈夫という確証はないため、誰かに助けてもらえる環境に身を置いた方が安心。(単身/30代女性)
障害のある方では、障害の特性による備えの難しさもあるようです。
・大型の電動車いすでマンション住まいなので、災害時は身動きが取れなくなると思うので、どう備えていいかわからない。(下肢障害/30代女性)
・PTSD(心的外傷後ストレス障害)により、たくさんの人がいるところで知らない人と過ごすことが苦痛になるため不安しかないし、どこまでの備えが必要かわからない。(精神障害/30代女性)
自治体によっては、自宅が安全であれば避難所ではなく自宅で避難生活を続ける「在宅避難」を推奨しています。在宅避難を行うには、自分自身でその間の生活を支える「自助」の考え方がとても重要です。家から出られなくなったとき、水や電気、ガスが使えなくなったときに、落ち着いて生活を続けられるかどうか、一度自分ごととして考えてみてください。
全体で最も備えているものは「水(ペットボトル等)」で53%でした。その他、よく備えられているものは「懐中電灯・ランタン」44%、「ウェットティッシュ」40%、「非常食」39%、「歯ブラシなど」35%などです。



60代、70代高齢の方や障害のある方は、比較的、備蓄率が高いのに対し、20~30代は最も備えている水でも38%。それ以外の項目はいずれも3割未満で、若年層の準備不足が顕著な結果となりました。



【過去の経験を今に活かそうとする人の声】
・停電や断水したとき、情報不足で不安を感じたが、飲料水や食料、懐中電灯などを少しずつ備えていたことで、当面を乗り切れるという安心感が得られ、慌てずに対応できた。普段から必要なものを少しずつ揃えておくことが心の余裕につながるな、と思った。(30代女性)
・1週間に及ぶ断水により、飲料水はもちろんだが、特にトイレの流し水が不足して困った。(50代男性)
・地震の直後、すぐに買い物に行ったが品物がなく、ストックしてた食べ物や飲み物、水がなくなるのではとヒヤヒヤした。(40代女性)
【若くても守るものがある人の声】
・自分達はともかく子どもが問題なく過ごせる準備をするのは、親の責任だと思う。(20代男性)
命をつなぐ「共助」の力:
配慮が必要な方々に周囲の人ができること
災害時に、配慮が必要と言われる高齢の方と障害のある方に、「災害を乗り越えられると思うか」を聞いたところ、70代高齢の方は79%が「大きな問題はなく乗り越えられる」、「多少の不便はあるが乗り越えられる」のいずれかを選びました。
一方、障害のある方では48%にとどまり、約3人に1人にあたる36%が「乗り越えられず、多くの困難を感じる」と強い不安を抱えています。
高齢の方や障害のある方の「乗り越え意識」には、自分でできる備え以外に、周囲からの支援・配慮が得られるか、普段と異なる環境に対応できるか、が大きく影響しているようです。
非常時には、隣近所の声かけやちょっとした手助けが安心感につながります。家族だけでなく、地域や職場での「共助」の意識を高めることも重要です。
災害リスクは気候変動やインフラの老朽化で増しています。経験がないと日常の便利さの中で災害を「他人ごと」と感じがちです。まずは自分と家族の暮らしが災害でどう影響を受けるかを想像することから始めましょう。
日頃の備えは被災時の安心につながります。水や食料、照明、衛生用品、薬、情報を得る手段など、優先順位を決めて少しずつ揃えることが現実的です。単身者や若年層は備えが遅れがちなので、まずは「これだけは」の必需品リストを作ることをおすすめします。
●関連リンク
政府広報オンライン「災害時に命を守る一人ひとりの防災対策」(外部サイトへリンク)
高齢の方や障害のある方、妊娠中の方や乳幼児のいる家庭などは、個人の備えだけでなく、周囲の手助けが必要になる場面があります。地域での連絡網や助け合い、職場や学校での支援体制を整えることが不可欠です。日頃から「助けが必要な人はいないか」を意識して声をかけ合う習慣を持ちましょう。
備えはひとりひとり異なり、これで完璧といったこともありません。少しずつ、身近なところから始めることが命と暮らしを守る第一歩です。自分のため、家族のため、そして周囲の人のために、今日からできる小さな行動を始めていきましょう。
【調査概要】
「2025年5月/インターネット調査」
◎首都圏在住20~60代男女/1,400人(各700人)
◎全国70代男女/600人(各300人)
◎全国18歳以上 身体・精神障害者男女/700人
◎2025年11月/インターネット調査/「My Kao くらしラボ」読者/3,598人